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「…ナっ、カナっ!」
アルファムの声が聞こえる。
俺は目を覚まさなきゃと、瞼を持ち上げる。
今度は、容易く持ち上げることが出来た。
「カナっ!俺がわかるかっ?」
「……アル?どうしたの?」
「カナ…っ」
目を覚ますと、真っ赤に目を充血させたアルファムが俺を覗き込んでいた。
俺が声を出すと、今にも泣き出しそうな顔で、俺を抱きすくめた。
俺の肩に顔を埋めて震えるから、もしかして泣いてるのかと心配になった。
「…アル、どうしたの?何かあった?…あ!もしかしてちびアルが…っ!」
「…馬鹿者。ちびカナは、すこぶる元気だ。今、ミルクを飲んで隣の部屋で眠っている」
「よ…かったあっ!ちびアル、元気なんだね?元気に産まれたんだね?」
「…元気じゃなかったのは、おまえだ」
「俺?俺、どうしたの?なんか長い夢を見てたけど…」
アルファムの髪の毛を撫でていた俺の身体を、アルファムが更に強く抱きしめる。
「カナ…カナっ…、もう大丈夫か?痛い所はないか?苦しくないか?」
「うーん…苦しい…」
「えっ!!」
アルファムが、ガバッと身体を離して俺の顔を見た。
アルファムの顔を見て、俺の胸がひどく締めつけられる。
だって、アルファムの緑色の目を縁どったまつ毛が、濡れていたから。
俺は、アルファムの頬に手を添えると、少し腫れた瞼にキスをした。
「大丈夫だよ。苦しいっていうのは、アルが強く抱きしめてたから、ちょっと苦しかっただけだよ。…アル、ごめんね。俺、とても心配をかけさせたんだね?」
アルファムの唇にキスをして離れると、今度はアルファムが俺の頬を大きな手で包んだ。
「…おまえが、もう目を覚まさないのかと、怖かった。もう俺の名前を呼んで、俺に笑ってくれないのかと…怖かった…」
「アル…」
「カナ…、おまえは、子を産んだ後に、大量の血を流して気を失ったのだ。中々血が止まらなくて、血止めの薬を下からも上からも入れた」
「血止め…」
俺のお尻に座薬みたいな物が入れられて、アルファムが口移しで苦い薬を飲ませてくれたやつだ。
「うん…それで?」と、俺はアルファムの手に頬を擦りつける。
「薬で血は止まったけど、おまえの意識が戻らない。医師は、血が流れ過ぎたので命が危ないと言う。もうおまえの生命力に頼るしかないと…」
この世界に輸血なんて無いもんなあ…と考える。
それにしても、輸血が必要な状態からよく助かったよな、と自分自身に驚いた。
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