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パンを食べ終わって少し話をして、「そろそろ戻る」と父さまが席を立った。
そして部屋を出る時に、「そうだ」とこちらを振り返る。
「カナ、五日後に日の国ディエスの王が来るぞ。水の国に行った帰りにエン国にも寄りたいと連絡が来た。カナもカエンも、よろしく頼むぞ」
「えっ、ディエス王が?わかった。準備しておくよ」
父さまが、笑って頷きながら出て行った。
隣に立つ母さまを見上げると、なんだかそわそわとしている。
「まずは泊まる部屋を整えてあげよう。カエンも手伝ってくれる?」
「うん、いいよ。カナ、なんか嬉しそう」
「そりゃあね。俺は、水の国スイと日の国ディエスが大好きなんだ」
「ふーん…」
飲み終えたカップをテーブルの端に寄せて、母さまが俺の手を握って部屋を出る。
母さまの手をしっかりと握り返して前を見ながら、俺は前に聞いた話を思い出した。
この世界は、五つの国で成り立っている。
母さまは、五つの国のどことも関係なく、全く違う世界から来たんだって。
ある日突然、空から降ってきた母さまを、父さまが助けた。
この世界には無い尊い黒い髪で、華奢で綺麗な顔をした母さまに、父さまは一瞬で心を奪われたんだと、何回も何回も聞かされた。
父さまだけじゃなく、他の国の王族にも気に入られた母さまは、何度も攫われては危ない目に合ったんだって。
その度に父さまが、自分の命を捨ててもいい覚悟で助けたって話してた。
母さまも、父さまのためならなんでも出来ると言ってた。
そんな二人を見ていると、俺もいつか命をかけられるくらいの大切な人に出会いたいと願うようになった。
母さまは、途中使用人の集まる部屋に寄って何かを頼むと、また俺の手を引いて、高貴な客が来た時に泊まる部屋に行った。
部屋に入ると母さまは、腕組みをして何かを考え始めた。
「うーん…」
「カナ、どうしたの?」
「うん…カエン、この棚、退けてしまってもいいと思う?」
「いいんじゃない?これが無くても壁の所にも棚があるし」
「だよね?じゃあこの棚を退けてここに柔らかい絨毯を敷こう」
「絨毯を敷いてどうするの?」
「ん?ああ、今度来る日の国の王には…」
「カナデ様。持って参りました」
部屋の大きな扉が開いて、数人の使用人が入って来た。
丸めた大きな絨毯を抱えている使用人もいる。
「ありがとう。この棚をここから出して違う客間に入れといてくれる?それで棚があった場所に絨毯を敷いてくれる?」
「かしこまりました」
母さまの指図を受けて、使用人達がテキパキと動く。
すぐに二人が棚を持ち上げて退けると、残りの人達が手際よく床を拭いて、絨毯を敷いた。
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