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城の裏側には高い崖があって、城を見下ろすことが出来る。
国の中で一番高い建物は城なんだけど、本当に一番高い所は、この崖なんだ。
この場所は、母さまに教えてもらった。
母さまは、パン屋のおじさんに教えてもらったんだって言ってた。
そしてこのとっておきの場所に、俺はリリーを連れて来た。
俺の護衛にリオとエン国の二人が、リリーの護衛にディエス国からも三人がついてきた。
護衛なんかいなくても、俺がリリーを守るから大丈夫と言ったけど、聞いてもらえなかった。
まあ、母さまと護衛をつけるって約束しちゃったから仕方ないんだけど。
崖に沿って作られた柵の前にリリーと並んで、綺麗で華やかな王都を眺める。
リリーは、崖から見える景色にとても喜んで、歓声を上げた。
「わあっ!すごいっ!あんな遠くまで見えるわ!」
「でしょ?ここは俺のお気に入りの場所なの」
「素敵な所ね!それにここから見えるエン国の建物って、白くて綺麗なのねえ」
「うん、そうなんだ。リリー、褒めてくれてありがとう」
「だって本当だもの。ディエス国は、お父さまや私の髪色と同じ、黄色い建物が多いの。ディエス国もとても華やかよ」
「へえっ。元気になる色だよね、リリーの髪の色って。いつか見てみたいなあ」
「そうね。いつかディエス国に来てね。というか、私達が帰る時に一緒に来る?」
「えっ?」
俺は、掴んでいた柵から手を離して、リリーと向かい合った。
「行きたいけど…たぶんだめ」
「なんで?お母さまと一緒に来ればいいじゃない」
「…それでもだめ」
「なんで?」
「リリーも王族だからわかると思うけど…。これ、言っていいのかな?リオ!」
「どうされました?」と言いながら、リオが素早く傍に来る。
「あのね…リリーが国に帰る時に、俺も一緒に行っちゃ…」
「駄目です!」
「ほらね」
リオを見上げていた顔をリリーに戻して、俺は笑った。
リリーがリオに飛びついて、「なんでなのっ?」と叫ぶ。
リオは、リリーの頭にポンと手を乗せると、しゃがんで目線を合わせて話し出した。
「リリー様は、王族ですよね。ディエス国は穏やかな国なので、この先そんな経験をされるかどうかわかりませんが…。リリー様の今後のために、きちんと聞いてくださいますか?」
「だからなんなの?」
「我がエン国も、昔から穏やかで平和な国です。でも、中には良からぬこと考える人間が少数だけどもいる。国の中にですらいるのですから、国の外にはもっとたくさんいる。そういう人間に、カナデ様は散々狙われてきたのです」
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