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後ろから「カエン様」と呼ぶリオの声が聞こえるけど、俺は聞こえないふりをする。
今はリオのお説教は聞きたくないんだ。
「カエン、いいの?リオが心配そうに見てるわよ?」
リリーが、俺の顔を覗き込んで聞いてくる。
俺は、前を見つめたまま「いいの!」と強く言った。
リオに邪魔をされたくなくて離れたけど、護衛の人達は、俺とリリーの後をピタリとついくる。
俺が足を止めて睨んでも、顔色ひとつ変えないでついてくる。
護衛の人達の後ろから、リオもついてきてるし。
「…王族って、きゅうくつだよなぁ」
「きゅうくつ?」
護衛から離れることを諦めて、近くにあった大きな石に座った俺の隣に、リリーも座りながら可愛らしく首を傾けた。
「うん…。だってさ、あれしちゃだめ、これもしちゃだめ、って言われること、多くない?俺は、王族に生まれたことは、どういうことかちゃんとわかってるよ。父さまやホルガーやシアンやリオに、まだ言葉も喋れないうちからいろいろと教えられてきたからね。国や民のために、ちゃんとしなくちゃいけないってわかってる。でもさぁ、少しくらい周りを気にしないで好きなことしたっていいと思わない?」
「カエンの好きなことって?」
「カナと二人で街に行きたい。でもこれは絶対にだめなこと。さっきもリオが言ったけど、俺とカナは、世界でたった二人しかいない黒髪だからね。『頭を隠してればいいじゃん』って言ってみたけど、『何が起こるかわかりません』って注意された。本当は、街だけじゃなくて、翔ぶ馬に乗って、国中を回ってみたい。他の国にも行きたい。…たぶん、俺がまた小さいからだめなんだと思うの。だからさ、俺はもっともっと強くなって、大きくなったら、絶対にディエス国に行くよ。俺が行ったら、いろいろと案内してくれる?」
「もちろんよ!さっきのリオが話してたこと、怖かったけど、私も気をつけなきゃと思ったの。今までお父さまとお母さまに守られて、周りのみんなが可愛いと言ってくれて、私は特別だと思ってたの。でも特別って、何をしてもいいじゃなくて、何かしなくちゃだめってことなのよね?私、これから勉強する。カエンが言ったみたいに、国や民のためにがんばる!」
両手を握りしめて、鼻息荒く言うリリーを見て、俺は思わず笑った。
「リリーはいい子だね。絶対にいい女王になるよ。俺もいい王になれるようにがんばる」
「うん。一緒にがんばろうね。それに私達、大きくなっても友だちでいようね」
「うん」
リリーと話してるうちに、胸の中のもやもやが消えてしまった。
「お腹が空いたし戻ろっか?」
「そうね。甘いものが食べたい」
俺とリリーは、立ち上がると城に向かって歩き出した。
「リオ、城に戻るよ」と声をかけると、リオが笑顔で返事をして、俺達のすぐあとをついてきた。
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