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母さまが亡くなったことは、まだ国内にも国外にも公表していない。
母さまの意向で、埋葬も終わって落ち着いてから公表することになっている。
母さまは人気があったから、民はひどく嘆くだろう。
母さまと仲の良かった日の国の王や水の国の王も、とても悲しむだろう。
でも、父さまの悲しみは、皆とは比べものにならない。父さまの悲しみは、とてもとても深い。
父さまは、母さまが亡くなってから、まだ一度も泣いていないんだ。
泣くという行為は、とても悲しいけれど、涙と共に悲しみを吐き出して、楽しい思い出を胸に、少しずつ立ち直っていく行為だと思う。
なのに父さまは泣かない。涙を見せない。父さまの心の中には、どれほどの計り知れない悲しみが詰まっているのかと心が痛い。
そんな父さまを、俺もホルガーもシアンもリオも、とても心配していた。
馬鹿なことはしないだろうけど、大丈夫だろうかと心配していた。
あと三日で四十九日になるという朝に、事件が起きた。
祭壇から、母さまの姿が消えたのだ。
毎朝、母さまに花を捧げてくれる母さま付きだった使用人が、母さまの身体が消えていることに気づいた。
驚いて叫び声を上げ、近くにいた警護の者が駆けつけ、事態をシアンに報告した。
シアンが、慌てて父さまに報告に行くと、部屋に父さまの姿は無かった。
俺は、報告を聞いて、急いで祭壇がある部屋に向かった。
部屋は荒らされた様子も無く、忽然と母さまの身体だけが消えている。
俺はいても立ってもいられず、二人を捜しに行こうと部屋を飛び出した所で、リオに会った。
「カエン様!聞かれましたか?厩舎にヴァイスもいなかったそうです!」
「ヴァイスが?それって…」
「はい。たぶんアルファム様が、カナデを連れてどこかへ行ったのです!」
「父さまが…」
父さまは、とても賢い。絶対に無茶なことはしないと、皆が思っていた。
それなのに父さまが?母さまを連れてどこへ?
まさか…母さまと離れたくなくて死のうなどと…!
「リオ!オルタナの準備をして!父さまとカナを捜しに行く!」
「はっ!ですが城に王族が不在になります」
「すぐにローラントおじさんを呼んできて!俺が戻るまで、おじさんに滞在してもらって!」
「かしこまりました」
俺は早口でまくし立てると、急いで部屋に戻って着替え、オルタナがいる厩舎へと走った。
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