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「リオ…父さまはカナをどうしたいんだろう」
俺の少し後ろを飛翔するリオに、ぽつりと問う。
少しの間があって、リオが答えた。
「アルファム様は、カナデをずっと傍に置いておきたいのかもしれません。例え動かなくとも、傍にいて欲しいのかもしれません…」
「俺も…そうだと思う」
たぶん父さまは、母さまと離れたくないんだ。
土に埋めてしまうと、もう顔も見れない。
それが、とても寂しく辛いんだ。
でも、俺だってそうだ。動かなくてもいいから、母さまにいて欲しい。いつでも母さまに会いたい。
だけどさ、ちゃんとお別れの儀式をして、母さまを送ってあげないと。じゃないと母さまは、安心して眠れないじゃないか。大好きな父さまの腕の中で息を引き取った母さまは、それは本当に幸せな顔をしていたんだ。
その幸せなまま送ってあげないと、可哀想じゃないか…っ。
「カエン様…」
いつの間にか隣に並んでいたリオが、俺を覗き込んで心配そうに声をかけてきた。
俺は、頬に流れた涙を手の甲で拭い、鼻水をすすると、オルタナの脇腹を軽く蹴って、速度を上げた。
オルタナは、他の馬よりも鼻が利く。
そのオルタナが向かった方角の先には、父さまと母さまが出会った海辺の城がある。
そして母さまの首には、昔、父さまが母さまに贈ったという大きな赤い石のネックレスがかけられている。
父さまと同じ名前のその石には、探知の魔法が施されているのだ。
そのことを父さまが知らないはずがない。
なのに、石を置いて行かなかった。
石のことを気にかける余裕もないくらいに、心が乱れていたのだろうか。
それとも、すぐに見つかる覚悟で、母さまを連れ去ったのだろうか。
どんなに考えても、父さまの心の内は、父さまにしかわからない。
「リオ、母さまの赤い石が魔法に反応した。やはり二人は、海辺の城に向かっているみたいだ」
「海辺の城?…ああ、お二人が出会った想い出の城ですね。カナデが埋めて欲しいと願った…。アルファム様は、カナデを埋葬する為に向かったのですかね?」
再び俺と並行して翔ぶリオが、首を傾げる。
埋葬する為なら、何も一人で連れて行く必要はない。あと三日もすれば、海辺の城へ母さまを運ぶ準備をしていたのだから。
「違う…。父さまはきっと…」
俺は呟くと、更に加速する為に上半身を倒そうとした。
「あっ、待ってください!海辺の城までは普通なら二日かかります。飛翔馬で行っても、丸一日はかかる。逸る気持ちもわかりますが、馬が疲れてしまいます。アルファム様もきっと、ヴァイスの為にどこかで休んでおられる筈です。俺達も、あそこに見える街で今日は休みますよ」
「…わかったよ」
父さまと母さま、ヴァイスがいなくなったとわかってから、ずっと翔んできた。
一日中進んで、もう日が傾きかけている。
オルタナの為にも今日は休んで、明日の朝早くに出立しようと、俺はリオの言うことを聞いて、下降を始めた。
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