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街の宿で一泊して、翌日の朝早くに宿を出た。
リオが、宿の厩舎からオルタナを引っ張り出していると、馬の世話をしてくれた従業員が、嬉しそうにこちらに近寄って来た。
「この馬、めちゃくちゃ綺麗っすね!こんなに美しい白馬は、見たことがない」
「そうか。俺の自慢の馬だよ」
「しかも飛翔馬っすよね?羨ましい!あっ、でも今朝早くに街のはずれで、同じような白馬を見ました!」
「えっ!どこでっ?」
「えっ?えっと…こことは街の真反対側にある小さな宿から、ちょうど出て来る所でして…」
「どんな人が、その白馬を連れてたかわかる?」
俺が聞くと、従業員は即座に頷く。
「へい。黒いマントを羽織り、フードを深く被った大柄な男っすよ。その男がちらりと顔を上げた時に見えた目が、お客さんと同じ緑色だったっす」
「リオ!」
「はい。こんな近くにいたのですね…。早朝にこの街を出たのなら、早く追いかけなければ…!」
「そうだな!君、その男はどの方角へ向かったのかな?」
「あっち側に走って行きやしたよ」
「…え?本当に?」
従業員が指を差した方向を見て、俺は困惑する。
なんで?父さまは、海辺の城を目指してたはずじゃあ…。
固まる俺に、「とにかく行きましょう」とリオが背中を押す。
俺は頷くと、急いでオルタナに飛び乗った。
リオも、従業員にお礼を言ってコインを握らせると、馬に飛び乗る。
俺とリオは、街を出て、 森の中の拓けた場所まで来た。そして馬に助走をつけて、一気に空へと駆け上がった。
「リオ、カナの身につけてる石が、探知出来なくなった」
父さまが向かったという方角に進みながら、魔法でカナの石の位置を探る。
いつもなら、石がある方角から赤い光が見えるのだが、今は何も見えない。
「父さまが、石に気づいて探知の魔法を外してしまったのかな…」
「もしくは、石の外側に魔法をかけて、探知を遮断したのかもしれません」
「そうか…」
俺は、細く長い息を吐いて、脱力した。
父さまの行先はわかっているから、すぐに解決出来ると思っていた。
なのに、宿の従業員が示した方角には、海辺の城はない。
でもさ、父さまと母さまの思い入れのある場所って、あの城だけだろ?二人が運命の出会いをした場所なんだから。
それ以外、父さまが母さまを連れて行く場所って、どこがあるんだよっ!
「ああもうっ!父さまっ、どこに行くつもりなんだよっ!」
「カエン様…」
手綱を握る俺の手が緩み、オルタナが歩みを止める。
空中に浮かんだままのオルタナの上で、俺は空を仰いで思わず叫んだ。
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