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ローラントおじさんと相談して、各国との対応は、父さまに任せようということになった。
父さまの、王としての最後の仕事だ。
それが終わってから、俺が即位することになる。
急なことなので、大きな儀式はしない。
各国からの来賓も呼ばない。
ただ、母さまのことを聞いて駆けつけるであろう水の国と日の国の王には、俺が王になる瞬間を見てもらいたいと思っている。
その各国への知らせは、母さまの埋葬が終わった後に出すことになった。
水の国と日の国の王は、もう母さまの顔を見ることが出来ないけど、すごく悲しむと思うけど、これ以上は日を伸ばせないので仕方がないんだ。
ローラントおじさんとの話が終わり、母さまがいる部屋に行く。
母さまの傍には、当然父さまがいた。
母さまは、レースの付いた白いシャツと赤いジャケットを着て、今日もとても綺麗だ。
だけどいつもと違うのは、ベッドに寝ているのではなく、棺の中に入っていることだ。
棺の中には、母さまの好きだった艶やかな赤い花や、母さまによく似合うピンクや白の花が敷き詰められている。
見ようによっては、本当に若く見えるのが不思議だ。
「見ろ…。ずっと不思議に思っていたが、カナは出会った頃から、あまり歳を取らなかった…」
「そう?まあ若く見える方だったけど。確かに俺が幼い頃は、親と言うよりは兄弟に見えてたなあ」
「そうだろ。お忍びで街に出た時に、俺とカナは、親子に見られた時もあった…」
「まあ父さまは、威厳のせいか歳より上に見られることが多かったから…」
「わかっている。俺は、心配だったんだ。いつまでも若く綺麗なカナを、早く返せと神がいつ召しにくるかと…。いけないことだが、俺は神を恨むぞ。カナを連れて行くのが早過ぎる…っ」
「父さま…」
父さまの悲しみが、いつまでも癒えない。
この先もずっと、癒えることはないんだろう。
父さまを癒せるのは、母さまだけなんだから。
俺は、少し小さくなってしまった父さまの肩を、抱き寄せた。
「父さま、王として最後の役目を果たして欲しいんだ。カナを埋葬した後、各国に知らせを出す。きっと水の国と日の国の王は、この国に駆けつける。二人ともカナが大好きだったからね。他の国からも何かしらの反応があると思う。その対応を、父さまに任せたい。それらをやり終えてからは、もう父さまの自由だ。母さまとの思い出のある海辺の城やイグニスの森で、母さまを想って暮らしていいよ」
「…わかった。段取りを全て任せてしまってすまなかったな。カエン、まだ歳若いのに、立派になった。俺は、おまえの父親になれて良かったぞ…」
父さまが、振り向いて俺の頭を抱き寄せながらそんなことを言うもんだから、色んな感情が押し寄せてきて、俺は思わず泣いてしまった。
母さまが亡くなった時の次くらいに、大きな声で泣いてしまった。
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