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俺は、腕を組んで眉を寄せた。
義理の母親の一族が使うという魔法の毒霧。
その毒霧が、ハオランを追いかけてこの世界に来た?
「…ということは、ハオランだけじゃなく、毒霧を使う誰かもこの世界に来たということ?」
「さあ…。それはわからない。俺とカエンの他に黒い髪の人物は見てないし…」
ハオランが、思い出すように目を上に向ける。
「ん?ハオランを殺そうとした奴も黒髪なの?」
「そうだよ?だって俺の国では、皆黒髪だよ。中には遠くの国から来た金色の髪や茶色い髪の人もいるけど。ここみたいに赤や橙色の髪の人はいないなぁ」
「ふーん」
ますます母さまから聞いた世界と似てるな…と少し胸が高鳴る。国の名前が違うけど、やはり同じ世界なのだろうか?
「カエン?」
「あっ、ごめん。この炎の国では赤系の髪の人が多いけど、他の国には青い髪や緑の髪の人がいるよ」
「ええっ?なにそれ!すごい髪の色だねぇ!見てみたいっ」
「え、そんなに興奮する?まあ…ハオランがさ、街を燃やした罪を償って、真面目にしてたら、いつか連れて行ってやるよ」
「ほんとっ?俺、自分で言うのも何だけど、ちゃんと勉強も剣術も頑張ってたんだ。だから真面目な出来る奴だよ?」
「あははっ、自分で言う?それはシアンが判断するから」
「…え、シアンって、もしかして…さっきの怖い人…」
「そう。彼は厳しいよ。頑張って」
「……うん」
とても楽しそうに目を輝かせていたハオランが、一瞬で見た目にもわかるほどに萎んでしまう。その素直に感情を出す所が、見ていてとても可愛らしい。
……ん?可愛らしい?男だぞ?俺は何を思ってるんだ…。疲れてるのかな…。
俺は、腕を組んだまま椅子の背もたれにもたれて目を閉じる。
とりあえず、ハオランを俺の部屋の隣の小部屋に軟禁しよう。怪しい奴ではないと思うけど、念の為だ。ただ、シアンは怒るだろうな。ハオランがシアンを怖がるのもわかるよ…。
またもや「カエン?」と声をかけられて、慌てて目を開ける。
俺は、大きく深呼吸をして、立ち上がった。
「今日のところはこれで終わり。地下牢じゃなく違う部屋に案内するから着いてきて」
「あ、うん。地下牢でもどこの部屋でも別にいいんだけど、俺、出来ればカエンにすぐ会える部屋がいいなぁ」
ハオランが、立ち上がりながらそんなことを言う。
俺は不覚にもドキリとしてしまい、それを打ち消すように咳払いをした。
「…お望み通り、俺の隣の部屋だ。だけど自由に出入りは出来ない。窓にも扉にも、開閉出来ないように魔法をかける。いいか?」
「うん、いいよ。カエンの隣の部屋かぁ。なんか楽しくなってきたね!」
大きな目を細めて無邪気に笑うハオランにつられて、俺も思わず笑った。
軟禁するって言ってるのに喜ぶなんて、やっぱり変な奴だな。
「ほら、早く行くぞ」
「…うんっ」
さっさと扉を開けて出て行く俺の後ろを、ハオランが慌てて着いてくる。
その時ハオランの頬が、赤く染まっていたことに、俺は気づかなかった。
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