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* Scent.2 *
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不意に手首を掴まれ、その方向を見た。
完全に怯えきっている二葉が、震える手で立花に触れている。
事に対して荒波を立てたくない様子で、立花の腕にすがりついてきた。
立花はただのアルバイトだが、二葉はれっきとした学生だ。
ここで諍いを起こせば、二葉の学生生活に差し支えるかもしれない。
学校側に訴えても、よくてお互い同程度の処罰、運が悪ければオメガのみに処分が下るときもある。
「あーあ、貴重な休み時間が潰れた。全く……オメガはこんな簡単な仕事も出来ねぇのか。つくづく無能しかいないんだな」
「……では、どのようにさせていただきましょうか?」
後々のクレームを回避するために選んだ言葉に、男は口角を上げた。
「お前らのミスで時間が潰れたんだから、お詫びで代わりの品を用意するんだろうが。ここに届けに来な。……すっぽかしたりでもしたら……まあ、言わなくても分かるよなぁ?」
一枚の紙の切れ端を投げつけるように渡されて、立花はそこに書かれている場所を確認する。
講義が行われている館ではなく、研究室が多数入っている建物のほうだった。
事前に控えられていたそのメモのところまで、オメガをおびき寄せる──目的としてはそれしか考えられない。
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