アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
* Scent.2 *
-
「はい。用意が出来次第、新しいものをお持ちします」
「ふん……こっちのオメガは随分と物分かりがいいじゃねぇか」
泥をかぶる理不尽さは何度も味わってきたし、もう慣れている。
アルファやベータはオメガよりも偉いとされているから、頭を下げて言うとおりに従う。
子供のときに真っ白な原稿用紙に自由に書いた「皆が平等で優しい世界」は、来ることはないのだから。
「……二葉君、怪我はない? 身体には何かされた?」
「だいじょうぶ……大丈夫、です。それより……ごめんなさい。立花さん……僕のせいで」
「僕のほうは大丈夫だから。二葉君が悪くないこともちゃんと分かってるから。……ただ、お客様にはとにかくまず始めに謝るようにはしようね」
二葉が袖で涙をごしごしと拭いて頷くのを見届けてから、新しいカップに先程オーダーされたものを注いだ。
「僕が行ってくるからお店のほうはお願いするね」
「……さっきの人、同じ学部の先輩なんです。すれ違ったりする度にからかわれてて。その……立花さんは全然関係ないんですっ。僕に難癖つけたいだけで……だから、任せてください」
顔を青くしている二葉に、立花は柔らかく笑って「大丈夫だよ」と囁いた。
膨らむ不安に、大きな瞳からひっきりなしに涙を溢れさせている。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
47 / 263