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* Scent.2 *
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「立花さん。ぼく、本当は……」
「すぐに帰って来るから。二葉君は気にしないで」
何かを言いかけた二葉を遮り、立花は「行ってくるね」と残して指定された場所へ向かった。
営業時間の変更や学祭のお知らせで本館の学生課を訪れたことは何度かあったが、別館へ踏み入るのは初めてだ。
学生達が日々研究に勤しんでいるため、どの階もしんと静まり返っているかと思いきや、部屋を行ったり来たりしているところも多い。
連なる何部屋かで1つの研究室なのだろう。
最後の角を曲がると、人の気はほとんど感じられなくなった。
メモの内容と部屋の番号を照らし合わせ一致しているのを確認して、立花は扉を3回程叩いた。
「先程は失礼致しました。代わりのものをお届けに上がりました」
「おう。待ちくたびれたぜ。……もう1人のオメガはいないのか?」
「……はい」
昼間なのに照明を落としてカーテンを閉めきっている部屋は、埃っぽい匂いがする。
中に入るように男に命令されたが、立花は断った。
中学や高校のときにも似たような手口を使って誘われた経験がある。身体能力の差で劣るオメガは、こうやって自衛する他ないのだ。
「数が少ないうえに噛まれてないオメガなんてかなりレアだからなぁ……まあ、1人捕まえただけでも上々か」
「は……?」
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