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* Scent.3 *
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集まりの直前で、立花の従兄弟にあたる男がそう告げた。
泣き寝入りする状況は今だってそう変わらない。誰も助けてくれないのに。
性に興味を持ち始めた年頃の従兄弟は、立花と顔を合わせる度に下品な言葉でからかうのだ。
「別に、いいです。僕が決めたことなので」
いちいち脅すような台詞を真に受けるほど、立花は弱くなくなった。
家に来たばかりの立花を苛めて、泣きわめく様子を楽しんでいた従兄弟は、逞しくなった立花を見てちっ、と舌打ちをする。
立花は相手にもせずに、集まりへ向かうため外につけてある車へと走った。
市街地から車で10分程走らせた場所に、本家の別宅が位置している。
葉をすっかり落とした桜木の道を抜けると、荘厳に構えられている門扉が目の前に現れた。
さざ波模様の庭園に小雪がちらつくのを眺めながら、立花は大人達に連れられて客室へ入る。
好奇と嫌悪の視線にすぐにまみれて、立花は座席についた瞬間に俯いてしまう。
やがて運ばれてくる料理はほったらかしのままで、お互いに腹の内を探り出す。
「うちは子供が3人いるし、金銭的に厳しい」
「代々がアルファの家系だから預かれない。そちらでどうにかならないのか」
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