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* Scent.4 *
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本来なら触れられない高みにいる人なのだ。優しくしてくれるからうっかり勘違いしそうになる。
嬉しくなったり切なくなったりする感情は、奥底に仕舞っておかなければならないものだ。
身体についた汗をすっかり綺麗にしてから、立花は再び同じ服を着て奥の部屋へ進んだ。
鞄の中の抑制剤は全て打っているし、涼風の匂いが漂っている部屋の中にいても、立花は正気を保てている。
少し開いたカーテンの間で、黒を透かした窓に自分の姿が映っている。
ぼうっと見つめた先の向こう側に、涼風が背を向けて佇んでいるのを確認した。
近くで光っているのはスマートフォンの画面だろうか。
何気ない普段の動作でも、絵になるくらい、素敵で存在感のある人だと、改めて実感する。
立花は涼風のスマートフォンへ着信を入れる。
数秒経って、向こうの画面が切り替わり声が繋がった。
「あの、涼風さん……」
「ああ。おやすみ。長い時間付き合わせてごめんね。終電はもうなくなってるし、ゆっくりベッドで休んで」
──寝る場所を分けるってもしかして……僕がこの部屋を使って、涼風さんは外で過ごすってこと?
「僕、ホテルかどこか泊まれるところを見つけるので。本当にごめんなさい」
「帰りたくない、って言ったのは立花君だよ。……心配だから、今夜は俺の目の届く距離にいて欲しい」
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