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「乃亜くん、乃亜くん…」
強く肩を揺すられて、ゆっくり目を開ける。
すぐ目の前に月島の顔が見えて、最悪な気分で顔をしかめた。
「あ、気づいた?気分はどう?」
「は?…いたっ…」
月島の顔を退けるように手で払って起き上がろうとする。途端に頭がズキンと痛み、頭を抱えて俯いた。
「頭…痛い…」
「ごめんごめん。薬が効きすぎちゃったかな?すぐに治ると思うから許して?」
「薬…?」
僕はハッと顔を上げる。
見慣れない部屋に幾つもの見慣れない顔がある。
「あんた達…誰?それに、ここはどこだよ?」
「俺言ったじゃん。パーティするよって」
「は?僕は行かへん言うたよな?なのに変なモノ嗅がせやがって…っ」
「乃亜くん、そんな言葉使っちゃダメだよ。乃亜くんは、俺達の憧れの人なんだから」
「はあ?意味がわからへん…」
月島は、テーブルの上に置いてあるコップを取って、僕に差し出した。
「なにそれ…」
僕は、赤い液体が入ったコップを目にして、思いっ切り苦い顔をする。
何が入ってるのかなんて一目瞭然だけど、聞かずにはいられなかった。
「俺達の栄養の元じゃないか。さあ、乃亜くんも飲んで。頭痛も吹き飛んじゃうよ?」
「いらない。そんな不味そうなモン飲めるか」
ふいと顔を背けて、寝かされていたソファーから立ち上がる。
月島は、手にしていたコップの中の液体を一口飲んでテーブルに戻すと、嫌な笑みを浮かべた。
「乃亜くんの為に特別に美味しい血を用意したのに…残念。あっ、どこ行くの?」
「…帰るんだよ。用事があるって言うたやろ」
のろのろとドアへ向かう僕の腕を、月島が掴んで止める。
「離せっ。こんな所にいたくないっ」
「ひどいなぁ。俺達は、数少ない仲間じゃないか。ここにいる同志は、乃亜くんの命令なら何でも聞くよ?」
「命令ってなんや…。別にそんなもん無いし。手ぇ離せよっ」
月島は、はあっと大きな溜息を吐くと、すんなりと手を離した。
「乃亜くんが頑固なのは知ってるからね。今日の所は諦めるよ。顔合わせが出来ただけで良しとするよ」
「あんた…もう二度と僕に近寄るな。卑怯な手を使って僕をこんな所に連れて来てっ。僕は、あんたが大嫌いやっ!」
僕はそう吐き捨てると、ドア付近にいる数人を押しのけて、頭痛に加え目眩まで起こし始めたことに舌打ちをしながら、ドアを開ける。
「あ、送って行こうか?なんか体調悪そうだし」
誰のせいやと悪態を吐いて、僕は思いっ切り力を込めてドアを閉めた。
マンションらしき建物の廊下を進み、エレベーターで一階に降りる。
視界が揺れて倒れそうになるのを堪えながら、何とかエントランスから外に出て、運良く走って来たタクシーに乗り込んだ。
「宇津木病院まで…」
震える声で力を振り絞ってそう告げるなり、僕は再び意識を失ってしまった。
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