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「魔女の家には近づくなって、教わらなかった?」
「教わった。けど、人に何かしてもらったら、ちゃんとお礼を言いなさいとも教わった」
「………………………………………あ、そう。いいご両親だね」
「うん」
俺が初めてこの家に来たのは、弟が行方不明になったときだった。遊び回って、迷子になったらしい。それをうちへ連れ帰ってきてくれたのが、魔女の家の住人だった。……とは、すべて近所の人から聞いた話だ。俺が学校から帰ったきたときにはもう、弟はニコニコといつものアニメを見ていた。
「ほんなら、お礼しなきゃなあ」
遅く帰ってきたお父さんが、疲れた顔でそう言った。
「俺行くよ」
「子供が行ってもなあ。大人が行かな」
「お父さん、次の休みもお母さんとこ行くじゃん」
「そうなあ、…………」
お母さんは重い病気で、ずっと入院してる。都会を離れてこっちに来たのも、それが理由だ。そこの病院じゃなきゃ、治療出来ないらしい。お父さんはなんとか仕事を見つけてこちらへ来たけど、それで今は精一杯だ。いつもくったくたなお父さんを見ていたら、なんか自分に出来ることはないかなって、思う。
近所の人からは、あんま近づかない方がいいよ、と言われた。あそこには頭のおかしい人が住んでるから。とくに男の子は危ないよ。
なんで? という俺の質問には、誰も答えてくれなかった。学校でも聞いてみたけど、あそこには魔女がいるとか、昔殺人をした人が住んでるとか、お化けが出るとか、いかにもデタラメな噂話しか出てこなかった。
菓子折りを引っ提げて、初めて訪れた場所で俺を出迎えたのは、多分お父さんよりは若い、綺麗な男の人だった。
訪れた珍客に、驚いていた彼は、俺の話を聞いて納得したみたいだった。
「わざわざ、いいのに」
「いえ、ありがとうございました。ご迷惑おかけしました」
ぎこちないながらも、頭をさげてみる。そんな俺に、男の人は言ったのだ。
「魔女の家には近づくなって、教わらなかった?」
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