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俺の相手する気ある? 多分、ないんだろう。初対面でわかってた。ヒヤさんは人嫌いだ。というか、苦手みたい。子供の俺にすら緊張してしまうし、無愛想だし、なによりものすごく無関心だ。
でも俺は興味津々だ。だからここへも足繁く通うし、口下手なヒヤさんから無理矢理言葉を引き出す。
ポケットからスマホを取り出して、ブックマークしておいたサイトを開いた。読み上げる。
「……………桧山秋海(ひやまあきうみ)。建築家。××年生まれ。×××県出身。○○大学建築科を卒業後、イタリアで巨匠・ロレンツォ……読めない、に師事し、××年帰国。主な作品は《海の鳴る家》、《迷路画荘》、《連なりの………っ、痛い! 酷い!」
静かにヒヤさんはマスクを外し、手袋も取って、俺に近付き、いきなり頭をはたいた。普通、ぶつか? このご時世、いきなり他人様の子供に手をあげるなんて、なかなかない。
「酷いのは君の方だ。不愉快」
「じゃあ嘘ばっかつくなよ!」
「……まずは反省しなさい。自分がされたら、どう思う?」
「俺身バレするようなもん、やってねえもん」
「論点はそこじゃない」
「………………………………ごめんなさい」
「許す」
でももう調べないで。それだけ言って、ヒヤさんはまた絵にとりかかろうとしたが、手袋をはめて、すぐに外した。
「気がそがれた。……君のせいだ」
「ごめんなさーいー、すいませんでしたーあー」
「…………………………本当に反省してる?」
「してるしてる。すげえしてる」
「…………………………………お茶にしようか」
「やったあ!」
「…………どうせそれが目当てだろ」
「んなことねえけど? さあさあ、下行こうぜ」
「……………………………」
「はーやーくー」
まだ何か言いたげなヒヤさんの背中を押して、今度は普通に階段でおりた。その階段も普通じゃなくて、三階から二階へはやたら段が細かいのに、二階から一階は逆に段差が大きい。小人の住んでそうな小さなイミテーションの窓やドアが壁についている。これらもヒヤさんが作ったものだ。
「…………どうやって…………」
ヒヤさんが、それだけ言った。意味を考えたけど、さすがにそれだけじゃ、わからない。
「なに?」
「……君にまともに名乗った記憶、ないんだけど」
「玄関に郵便物放置すんのやめれば?」
「ああ…………」
納得したあと、ヒヤさんは溜め息をついた。
「子供って怖い」
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