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「…………昔から劇団とか、クラシックのほうが、関わりがあったから」
ヒヤさんが言った。あれ、意外。興味ない話題だから、おしまいかと思ってたのに。
「歌っていうと、オペラとかミュージカルとか……。まあ、詳しいわけじゃないけど。……あんまり日本の流行りって、聴く習慣なかったな」
「へえ、そうなんだ……」
珍しく自分のことを話してる。そういえばこの人、どこでどう育ったんだろう。あんま、聞いたことない。
片付けは終わって、狭い出入口からのそのそ這い出る。空が見えた。不思議な淡い色を重ねて、もうじき日が暮れる。
「今日はありがとう。もう帰りなさい」
「やだ」
「やだじゃないだろ」
「やーだー」
「だーめー」
ぐずる俺の手を引いて、ヒヤさんは廊下を歩く。付き合ってから、ちょっと優しくなった気がする。それとも、俺の病気のことを気にしてるのか。……正直に話せない。嘘だって、いつか言わなきゃいけないのに。
ごめんなさい。
前をいく大きな背中を見つめる。あたたかくて、柔らかい手の感触。
「……………ヒヤさーん」
「んー?」
「……好き」
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