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「なんで怒んの? 俺悪いことしてな」
「はいはい黙ってもうわかったから」
「んぶぶ」
乱暴に抱きしめられて、頭を撫でられる。犬かよ。納得いかない。……でも。
「えへへ」
「なんだよ気持ち悪いな」
「久しぶりに名前呼んでくれたから」
出会った頃、数回呼ばれただけだ。はるき君、とぎこちなく口にして、俺の扱いに戸惑っていたのを覚えている。どうせ二人きりだから、君呼ばわりでも支障はないけど、やっぱりちゃんと言われると嬉しい。
「……………だって苗字知らないし」
優しく抱き直して、ヒヤさんは俺の髪を撫でる。こうやって触られるの、好きだ。
「え、俺言わなかったっけ」
「言ってないよ。名前しか教えてくれなかったでしょ」
「弟言ってなかった?」
「…………忘れた」
いやあ、あいつは迷子になったら、フルネーム言うと思うよ。
「んー……言いたくないんだもん。嫌いだから」
「なにそれ。平凡とか、そういうこと?」
「うん。逆だけど」
「教えて?」
えー、やだなあ。
ゴウガマ、という響きすら、嫌いだ。なんか強情なガマガエルの略みたいで。
四文字を口にしたら、ヒヤさんは首をかしげた。
「別に変でもないでしょ。なんでそんな嫌なの?」
「うしろに、かまって書くの。ご飯炊くやつ」
「うん?」
「……………」
「………………………で?」
「…………いや、普通に読んだら後釜(あとがま)じゃん?」
案の定笑われた。
「もー、だから嫌なんだよー!」
「ごめ、その発想はなかった」
「ちげーよ俺が考えたんじゃねーし。言われてきたのー。やなのー!」
「ごめんごめん。別に苗字くらい、」
「生まれつきあとがまなのに?」
「……………」
「笑うじゃん! 嫌じゃん!」
「……ごめん」
「一番手になれない人生だよ。二番煎じだよ」
「……………」
「笑うじゃん!」
「………………ごめん」
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