アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
小さな繋がりと課題①
-
あ、危ない!!
もしマダラがボスに絶対的な忠誠心を誓う兵隊だったらどうするんだ!!
常盤様にオヤジ犬なんてふざけたあだ名付けてんじゃねぇぞゴルアァ!!!
ってなった。
絶対なった、殴られてた。
危ない、もう変なあだ名付けるのやめようかな。
マダラも、久住先輩って呼びなおそうか。
まだほっぺをパンパンにしたまま、俺はうろうろと廊下を彷徨った。
昼休みだけあって人気も多い。
いつものトイレに篭ろうと思ったけど、誰かがうんこしてたから諦めた。
オヤジ犬と出してしまった後で、橋北のボスの事なんかもう聞けない。
聞いたらバレてしまう、オヤジ犬イコール橋北のボス、という事が。
でも俺は聞き出したい。
マダラが知ってるならの話になるけど、色々聞き出したい。
パンパンになったほっぺをどうこうしようとする頭はなく、そのままの顔で俺は更に校内を彷徨った。
すれ違う生徒のほとんどが俺を指差して腹を抱えて笑って行くが、そんなのも目に入らないくらい俺は考え込だ。
そしてついに、人とぶつかり無様に転げる。
ぶつかった相手に殺される前にとすぐさま土下座。
ああ、情けないぞ祐介。
一体いつになったら脱チキンを成し遂げる事が出来るんだ。
額を廊下にペッタリつけたまま、俺はため息を吐いた。ら鼻から息が出た。
そこで漸くパンパンのほっぺに気付く。
「おい」
口を動かすと同時に上から落ちてくる低い声。
ごめんなさいと言えない役立たずの口にイライラとしつつ慌ててパンを飲み込もうと喉に追いやった。
そしたら喉に詰まって息が出来なくなった。
あほです。
「ぐっ…、」
土下座ポーズを解除し、必死で胸をドンドンと叩く。
嘘だろ、息が…。
「おい、祐介、どうした?」
ぶつかった相手に名前を呼ばれたが、何で知ってるんだろうとかそんな事も考えられないくらいに俺は焦っていた。
呼吸できない苦しさから、全身が汗でじっとり濡れ始める。
必死で胸を叩くが、全く意味を為さない。
このままでは窒息。
俺の頭にある光景が浮かび上がった。
──次です。
今日未明、○○県□□市の京南高校の男子生徒が、昼休みにパンを口に詰め込み過ぎ、窒息死しました。
一緒にお昼を食べていた男子生徒の話によりますと、オヤジ犬と発言した後に突然パンを口に詰め込み、そのままオーイエーと言い残し教室を飛び出したとあり、窒息したのはその後と見て、警察は詳しく調査を進めています。
い や だ
絶対に嫌だそんなニュース!!!
頑張れ祐介!!
早く異物を取り除くんだ!!
しかし、酸欠になり始めた俺の視界は少しずつかすんでいく。
ああ、死ぬ。
そう思って目を閉じた瞬間背中をありえないくらいに思いっきり叩かれた。
その衝撃で俺の体は前のめりになり、俺は咄嗟に両手を廊下につけ体を支えた。
「けほっ…、っ、は、はあ、はあ…」
叩かれた事により、パンは喉から口内へ、そして外へと吐き出された。
た、助かった…。
苦しかった時の恐怖と、息を吸える安堵感からじわりと目に涙が浮かぶ。
そして、助けてくれた相手にお礼を言おうと俺はゆっくり視線を上に向けた。
「あ…」
「何やってんだお前は」
そこには、まさかの…。
「こんなデカイパン口に入れて歩いてんじゃねぇよ」
「す、みま、せ…ん」
ぶつかった相手は、ボスザルだった。
久しぶりに見るその姿に、俺の心臓が瞬く間に早鐘を打ち始める。
トクトクと、その喜びを俺の変わりに叫んでいるようだった。
しかし驚いたのはその色だった。
金髪だった髪が、真っ白になっている。
どうしたんだろう。
髪が真っ白になるくらいにショックな出来事でもあったんだろうか。
その髪に目をじっとり貼り付けていれば、しゃがんで俺を見るボスザルの口元がふっと崩された。
「単なるイメチェンだ」
「あ、はい…」
読心術の心得でもあるんだろうか。
ビックリし過ぎて声が上ずった。
「大丈夫か」
「は、はい…」
そこでやっと頭がクリアになり、俺は咄嗟に辺りを見渡した。
誰かに見られていたらマズイかも知れない。
きょろきょろと首を振っていれば、今度はボスザルに頭を撫でられた。
そしてまた、心臓が一瞬停止する。
.
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
84 / 301