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マンションに向かいながら、俺はアッと思い出した。
鍵、ボスザル入れたのかな…?
と考えてから、そう言えば慌てて飛び出してきたから鍵かけてないや、と安堵する。
いやいや、無用心だから。
まあ、結果オーライで。
マンションに着き部屋に入ると、ボスザルはリビングに居た。
なんだか気まずい。
謝った方がいいのか、と、互いに無言のまま、相手を目に写していた。
「えっとー、さっきは…」
かわいそうじゃん、って言葉が、迷っていた俺を後押しする。
ごめんなさい、と呟けば、またボスザルに手招きをされて、今度は素直に従った。
「ん…」
ソファーに座るボスザルに近付くと、膝の上に跨がるように乗せられて、ゆっくりと口を塞がれる。
徐々に深くなっていくキスに、俺はボスザルのシャツをきゅっと掴んだ。
溶けるようなキスに翻弄されていれば、耳の奥で三人の言葉が響き出す。
甘えたり、催促したり、ちゃんとした事ない。
したくないんじゃなく、恥ずかしさが先に立って、どうしても出来なくなる。
本当は甘えたりしてみたいのに。
「何か、考えてんのか」
「え、別に…」
ふっと口が離され、執拗な口付けにじんじんと熱を持つ唇は、だけどとても心地よかった。
「どうした」
キスをした後に──
思い切って誘ってみようか。
何かを考えてるってわかってるんだろう。
ボスザルの頭が微かに傾いた。
「あの、」
「ん」
優しい眼差し。
慈しむような深い視線。
心が、焼けそうだった。
そうだよな…。
冷たい態度とか避けるような行動とか、そんなんばっかりじゃ本当に浮気されちゃうかも知れない。
イヤだ、そんなの。
「何だよ、言え」
「えっと…、ば、バナナが、大きいバナナが欲しいです…っ」
よくわかんないセリフだけど、誘い文句って三人が言ってたのしかわからないから。
てか、あんだけ爆笑して、本当に誘い文句なのかどうかすら怪しいけど。
でもとりあえず言ってみた。
そしたらボスザルの眉間にシワが出来た。
あれ?
あ、
「ち、違う、あの、こけしっ、立派なこけしを下さい!」
「…………」
ま、まずい…っ。
やっぱり疫病神の言葉は嘘だったんだな。
ますます怪訝な顔になったボスザルに、俺は慌てて言葉を続けた。
ハルさん、信じてます。
「ちがっ、えと、熱いから注射を──」
「わかったから黙れ」
「え…」
はぁ、と深いため息と共にボスザルは俺を膝の上から下ろした。
な、なんだ、もしかしてもしかしなくても完璧に外した?
なに、本当はすんごい卑猥な誘い文句だったとか?
俺にはレベルが高過ぎたとか。
なんてね、あの三人の言葉を引用した俺が間違ってるんですけどね。
ふざけて言ってたってわかってたんですけどね。
でももしかしたら、ふざけた誘い文句でも喜んでくれるんじゃないかって思ったから。
うん。
失敗した。
しゅん、となる俺を、ボスザルが苦笑しながら抱き締める。
そして、
「いいか、頼むから今後あの三人と必要以上に関わるのはやめてくれ」
と、ボスザルはまた大きくため息を吐き出した。
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