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子鳥のさえずりとスマホから流れるスヌーズの音が僕に朝を教える。
起きて早々に目にする天井はいつもより色褪せて見えた。
今日のお日様は輝くほどの晴天だった。
「門出には…ちょうどいい日だね」
_冬本来の寒さが襲ってくる今の時期は熱々のカフェオレと焼いただけの食パン。
ぺろっと平らげ、いつもより丁寧に食器を洗った。
そこに僕がいたなんて分からないくらいに。
部屋に戻り出て行く準備をする。
「~♪♬︎」
…呑気に鼻歌歌ってる自分はどんな顔をしているのだろう。
…きっと見るに堪えない顔をしてるんだろうな。だって、ほら。
また目の前が滲んでる。
「…これぐらい、かな」
荷物は必要最低限のものを詰め込むと鞄1つで済んでしまった。
「服とかは…またいつか取りにこればいいよね」
_本当はまたこの部屋に来る言い訳が欲しいだけ。
そんな醜い自分の心に蓋をしながら、部屋を見渡す。
そういや先輩とお揃いのものなんて買ったこと無かった。
お店でカップル専用のマグカップとか良いなって思ったりしたけど、先輩からそんな話は出てこないし、わざわざお金を出すほど二人の愛を確かめたいと思わなかった。
でも今思うと何か一つでも買っとけばよかったな。
先輩の生活の中に僕という存在を残しておきたかった。
…もうすぐお昼だけど食べなくていいかな。そんなにお腹すいてないし。
本当は明日に不動産屋行く予定だったけど、時間余っちゃったし今から不動産屋行ってこよ。
「荷物は…財布と携帯あればいっか」
「…行ってきます」
_帰ってくるはずない言葉を未だに言い続ける。
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