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蒼太side
ちゅんちゅんと雀がなく声が朝を示していた。
静かに目を開け、いつの間にか充電されていた携帯を手に取る。
「6時半」
思ったより眠れていた。
少し催して、御手洗を借りようと部屋を出た時、そういえば御手洗の場所知らないと気付いて先生を探した。
初めて入った先生の家のリビング。
そこには白と黒で統一されている部屋に不釣り合いの濃い青色のソファがあり、そこに先生は寝ていた。
気持ちよさそうに寝てる先生を起こすのは可哀想…かな。
自分で探そう。
「えっと…ここの扉かな」
御手洗を済ませ、1晩ここに止めてくれたお礼にと朝ごはんを作ろうと思ったが…
「…病人がキッチン立ったら駄目じゃ…」
それに、勝手にキッチンを使われるのは気分が良くないかもしれない。
先輩の家だと僕が作るのが普通だったから、常識を忘れてた。
暇ができちゃったからもう一度部屋へ戻っておこうと、腰を上げた時、先生のスマホにアラームが設定されているのが見えた。
アラームは7時半。
つまり、7時半まで寝てても間に合う時間に病院が開くことを表していた。
あと約1時間。
大人しくベッドに横になっていよう。
ベッドの横にある体温計を手に取り、体温を測る。
「35.5度…平熱」
これで今日から働きに行けると少し心が前向きになった。
そういえばお給料ってどのくらいなんだろう…聞いてなかったな。
個人経営だし多くはないんだろうけど、1ヶ月生きていけるぐらいあるなら…それでいいや。
ていうか、葉山先生のとこで働いてる他の3人の人はどんな感じだろう。
めちゃくちゃ怖い人…とか、めちゃくちゃ陽キャな人…とかだったら…。
でも先生が選別してるんだし良い人ばっか…だよね?
うん、そうだよ、絶対。
だから不安になることないって、僕。
…なんて、自分で自分を脳内で励ましたが過ぎた時間はたったの10分程度。
スマホを見ようにもブルーライトがきつくてさっき時間を見ただけで目がチカチカする。
「うーん…やっぱり寝るしかない、か」
電気を消し、アラームを設定して静かに目を瞑った。
_ 暗い、闇。
前も後ろも上も下も右も左も全てわからない。
《ここは…?》
深海のようで、上空のようでもある。
〈ねえ、どうして?〉
不意にどこからか声が聞こえた。
《えっ…?》
〈どうして先輩から離れたの?〉
…そうだ、この声は
《昔の“僕”…だね》
〈そう。ねえどうして先輩から離れたの?先輩の近くにいることが幸せでしょ?〉
《…うん、そうだね。そうだと思ってたよ。でも君も“僕”なら全部見ていたんでしょう?》
〈知ってるよ、何もかもね。それでも僕が我慢すれば良かったのに。僕は勝手に逃げ出した、臆病者〉
《……》
〈それなのにもう次を見つけたの?えっと…葉山先生…だっけ。ああそうだなんなら“僕”が変わってあげようか?〉
《あの人は…っ関係ないっ!!それに変わるつもりもない!》
〈ふーん…まあ良いけど。でも覚えていて、“僕”は先輩から離れられない。どんなに時間がかかったって“僕”は先輩の所に戻るよ。その証拠に先生にだって"本当のこと"教えてないくせに〉
《……っ!!!いやあれは言う必要ないと思って…》
〈確かにそうかもね。言ったら僕は気味悪がられてたもんねー。それでも嘘をついてることに違いはない〉
《…………》
〈…あ、朝が来る。ほら愛しの先生のとこで働くんでしょ。せいぜい少しの間楽しみなよ〉
暗闇に光が差し込む。
一瞬、“僕”の姿がシルエットになり、ふわりと消えた。
そして僕も意識が徐々に消えていく_
「……ん、」
目が覚めると白い天井。
戻ってきたんだ。
「…本当のこと………」
それを言ったら、気味悪がられてしまう。そう思って言えない。
今までもこれからも…誰にも言うつもりはない。
_ガチャ
「風上さん、起きましたか?」
「先生…はい、起きました!」
「顔色も良いですし、熱はなさそうですね。朝は食べられそうですか?」
「はい、食べないと力出ませんしね!へへ」
「あ、病院は9時スタートだから8時半ぐらいに出る予定で大丈夫かな?」
「あと1時間…すみません!食べる前にお風呂借りてもいいですか?!」
「あ、忘れてた笑 いいよ行っておいで」
「すみません、借ります!!」
_
「先生って以外と女子力高い…?」
先生の家のお風呂はあわあわのお風呂でとっっても気持ちいい…
だけど時間もないと、急いでシャワーを浴びると柑橘系の匂いのボディーソープで、思わず笑ってしまった。
「やっぱり先生、女子力高い…」
あ、服ってどうするんだろ。
と一抹の不安を抱いたけど、先生がもう既に脱衣所に服を用意してくれていた。
「すみません、服まで…ありがとうございます」
「いえい…………」
先生は僕を見てフリーズしてしまっている。
「せ、先生?どうかしましたか?」
「……あ、ああ…私の服だと大きすぎましたね」
「え…あ」
確かに先生の服は大きくて、肩からずり落ちてるしズボンもゴム製なのに緩い。
「一応それでも小さいサイズを選んだんですがね…」
「つまり、僕が小さすぎるんですよ…」
「ま、まあまあ小さいのも魅力じゃないですか?」
「先生みたいに高身長で?イケメンで?医者とかいう高スペックな人に?僕の悩みなんて分かりませんよっ!!」
…若干八つ当たりになってしまった。
さ、さすがに言いすぎた…かな。
チラッと先生の顔を見てみると…
「ふふっ…」
笑ってた。
「わ、笑い事じゃありませんよ?!!」
「すみません、本気で言っているからこそ笑ってしまって…ふふ」
「なっ…!!」
これには僕でも
怒ったからな!!
許さないかんな!!
はしもとかー……駄目だ。これ以上はどこからか怒られそう…。
「ごめんなさい、ツボにはまってしまって…朝ごはん食べましょう?」
そう言う声は少し震えていた。先生、絶許。
「……………食べますけど」
先生の朝はブラックコーヒーと食パン、サラダに目玉焼きとThe健康なご飯で僕のは…
「これって昨日のおかゆ…?」
「ええ、まだこういう方が良いかと」
…なんだ。先生のちゃんとした手料理食べてみたかったな。
…なんて病人が口出す問題じゃないよね。
おかゆは綺麗に食べきり、諸々の準備もして今病院前。
「多分もう全員ついてるから先に挨拶でもしておいで。大丈夫、みんな優しい人だから」
「は、はい…頑張ります…」
先生は先に中へ入っていき、僕も少しの勇気と努力を持って、チリリーンと鈴の鳴る病院の扉を開けた___
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