アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
48
-
葉山side
「なんだか、遠くに行ってしまいそうですね」
_
どうしてあの時自分は、彼を裏に行かせてしまったのだろうか。
もう少し、あと少し、着くのが早かったら。
彼は犯されなかったかもしれない。
薬を打たれなかったかもしれない。
全て…私の責任だ。
愛する人が、今、目の前に寝ている。
その姿は今にもいなくなりそうだった。
彼は目を覚ましたが、記憶が混濁して私のことも覚えていない。
とてつもない…喪失感に襲われた。
先輩の所へ帰りたがっている。
きっとその顔じゃ先輩がもう風上さんを見ていないと分かっているはずなのに。
それでもまだ帰りたがるのか。
きっと私の方が君を幸せに…
なんて、言える立場じゃないか。
きっと道が分からないだろうから教えてあげようと思ったのに、返したくなくなった。
まだ、もう少しだけ、私のそばに…
翌日、彼が目を覚ますと記憶は戻っていた。
喪失感がやっと無くなった。
だけど、それは同時に罪悪感を煽った。
あの時、行かせなければ…
そんな思いは彼の言葉に打ち消された。
…そう、ですね。私が教えたんでした。
ポジティブに考える方が楽だって。
私の言葉を覚えていてくれた。
でも私はそれ以上に、君が笑っていてくれる、それだけでもう
充分なんです。
_
「……決着ですか」
もし、ヨリが戻ったら…
そんな考えが頭を支配する。
きっと風上さんの心にある根は深く根付いてる。
「でも…私には、待っているしか出来ませんね」
あなたの心がどこにあろうとも、私は、ただ待っています。
ただ、あなたに選ばれる日を。
ただ、その日を。
待って、待って、待ち続けます。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
56 / 102