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完結後の世界 =10(真実⑤)
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家に入ると、少し腐った匂いが鼻につく。
あぁ、そう言えば母親の死体そのままやったわ…
冷たい体に触ると今までに感じたことがないゾワリとした妙な不安感に駆られて、咄嗟に手を離す。
_母さんは学校から帰るとキッチンで死んでた。
一目見ても分からないくらいに血は少なくて、表情も穏やかで、ただ眠っているだけと言われたらそうな気もしてくるほど。
でもどこかで、あぁやっとかって思ってる自分もいて。
父さんへ捧げる復讐のために母さんはもっと強くなって欲しかった。でもこの人はいつまで経ってもお気楽で、父さんのことなんて忘れて生きてる。
それが腹立たしかった。
「ねぇ、母さんはこういう俺の気持ちに気づいてたん?だから…死んだん?」
そう尋ねてみても、返事はなかった。
一人になったこの家は広くて、冷たい。
でも戻れない。
ソファの上に座って箱を開ける。
気分はまるで浦島太郎だ。
「写真…」
入っていたのは何枚かの写真。
それには髪をオールバックにしてタバコを拭かせている父さんとか、同じくヤクザの人であろう人と肩を組んでいるところが写っていた。
格好は俺の記憶にある父さんとはかけ離れている。
それにこんな笑った顔なんて見たことない。
いつもムスッとしてて母さんと話してる時ですら表情を変えない、そんな人だった。
「父さんは家族よりこいつらといた方が笑っとるとか…なんなん…自分の妻と子供はそんなに退屈だったかよ」
行き場の無い言葉を吐きながら見ていくとある時から様子がおかしくなるのがわかった。
「これはなんか寝転がってる…こっちは笑いながら人殴ってるし…っあ」
そして決定的なモノを見てしまった。
金属の棒で得体の知れない粉を吸い上げている写真。
一瞬にして悟った。
あぁ、あのお頭さんは本当のことを言ってたんだと。
俺の見てきた父さんは、偽りだったと。
「……っは、あはっ…あははっ!何だこれ…どこもかしこもクソだらけ、こんな奴のどこがいいん母さん」
時計の音がカチカチと鳴る。
返事はない。
「あーあ、俺はクソな野郎から生まれて母親を見殺しにしたクソ野郎…蛙の子は蛙ってか?あはははっ!…ハハッ…」
_なぁもう目の前が真っ暗だよ。
誰か、誰か…
『____』
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