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金色の瞳のチェシャ猫のお話21
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「いってらっしゃい」
チェシャ…基、玉屑と
「御気をつけて」
ミケ…基、八朔は穏やかな笑みを浮かべて、それぞれ色の違う宝石のような瞳を天花へ向けていた。朝日を取り入れると、更にその輝きは美しさを増す。
「今日は早く帰れると思います」
「はい。承知致しました」
ミケが丁寧に頷いた。
天花は、大きな身体を押し込めるように、軽自動車に乗り込んだ。後部座席には、風呂敷が積まれている。天花の乗った軽自動車を見送って、2人はいつものように寺の留守を預かる事になる。
「今日で7日目ねぇ」
ミケは欠伸をした。
朝露の含んだ清らかな空気をめいっぱい吸い込んで、背伸びをする。こんなに朝早くから連日活動をする事が無いので、至極健康的だと思う。身体の調子もいい。
今日で7日。
朝活動するのも、そろそろ終わる。
明日には、弟子が帰ってくるから、ミケもチェシャを連れて帰る事が出来る。
「…」
ミケはチェシャを見ると、嫌そうな顔でミケを見ていた。
「…お前、太ったな」
ふと、ミケはチェシャにそういう。
「うるさい」
変わらないミケとは違い、どこかふっくらしたように見えるチェシャの肉付きをみてそう言った。
「別に悪くは言ってねぇだろ。…むしろ、そっちの方がいいんじゃねぇの?住職だって、抱き枕は、フカフカしてた方がいいだろうし…」
「うるさい」
余計なお世話だ。お邪魔虫。と、チェシャは心の中で思いながら欠伸をした。
「そういえばさ…」
ミケは気がかりだったことを口にする。
「聞こうと思ってたんだけど…」
「なに?」
2人は寺社の門をくぐった。
「お前って、ボスに任務の完了報告したの?」
は?
チェシャはいう。
「したよ」
「だれに?」
「誰にって…ジジにやっとくって言って別れたけど」
すると、ミケは眉間に皺を寄せる。
「…は?」
エメラルドの瞳が、竹林の影で色が濃くなる。
「ボスに直接報告したって連絡もきたし…」
チェシャは、そう言って携帯電話を取り出し証拠のメッセージをミケに見せる。
「ふーん…」
ミケは、チェシャから視線をそらした。
「なに?」
その様子にチェシャは、眉間に皺を寄せた。
「あのさ」
ミケはいう。
「たぶん、ジジは裏切ったと思うんだけど」
「は?」
ミケは、続ける。
「お前の任務って、香港マフィアの暗殺だったよな?」
「そうだけど」
「…ジジって、そのマフィアに飼われたんじゃね?」
ミケの推測に、チェシャは目を眇める。
「…お前って、ボスになんて言われてここに来たの?」
そもそもの話だ。ミケはボスに言われて、チェシャの元へ来た。それが、なぜ来たのか…という事だ。
「チェシャと半年連絡がつかない」
「はぁ?」
おかしな話だ。
チェシャが聞いていた話だと、連絡は逐一しているから大丈夫だと…
確かに、確認しなかったチェシャも悪い。
「お前…もしかして、連絡の一切ってジジがやってた?」
ミケはチェシャの様子から察する答えを彼に尋ねた。
「ああ…」
チェシャも一気に繋がった。
「…なるほどね」
ミケは頷いた。つまり…
「ジジは、任務の報告の一切を請け負うと言って報告はしていなかった…お前は、半年から一年くらい行方をくらますことが当たり前だから、ボスも気にしていなかったが…さすがに今回は、何かを察して俺にお前の所在を確認して来いと、命をだした」
2人の繋がった推測が、合致する。
「っち」
チェシャは舌打ちをした。上手く利用されていた事に半年も気づかなかった。
「全部まとめて、ボスに報告だな」
ミケが来なければ、全て明らかにされなかった事実だ。
「…すまん」
チェシャは謝った。すると、ミケはチェシャの頭を叩いた。
「いって!」
チェシャはミケを見る。
「悪いと思ってんなら、行方をくらますな」
そもそも、チェシャが日頃からいなくなるのが当たり前になっているの悪い。
「だって…っ」
チェシャの金色の瞳が歪む。
「…なんだよ?」
勢いと共に紡がれるはずだった言葉は、途中で終わってしまった。喉元まで出た言葉をチェシャが、飲み込んだのが分かった。
「言えよ。気持ち悪ぃだろ」
ミケに促されて、チェシャは恐る恐るいう。
「…青い腕がね…身体から出てくるんだ」
それは、すごく小さな声だった。
「…」
ミケは、鼻で笑ったり、馬鹿にしたりする事無く、じっとチェシャの話を聞いていた。
「それだけじゃない…お化けとかそう言うのとか…」
ボスが、チェシャを絶対に手放さない理由に普通の人には持っていない力を持っているというのがある。
「ジジの時は、それが酷かった…近くがお墓だったっていうのもあるかもしれないけど、たぶん泊まったホテルが元々なんかあったりとかして、いろんな場所を触るたびに、ビリビリしてすごい嫌だったんだ…」
チェシャは、人に触れると色んなことが分かる。
考えている事、住んでいる場所、良くない影響…様々だ。だから、チェシャに嘘は通じないのは、組織でも有名な話だ。ミケに触って、ミケの触れてほしくない単語を口にして彼の感情を逆撫ですることだって容易かったように、大体の事は望んだ映像を入手する事が出来る。
しかし時に、チェシャが望む、望まないに関わらず、その力を発揮してしまう時がある。そんなチェシャが、ジジの嘘を見抜けなかったのはミケには違和感があった。
それが、なぜかはチェシャが今言った通り。恐らくは、仕組まれていたのだ。チェシャは、思い出して、怯えている様子だった。ミケは、チェシャがどんなものを見たのかは分からないし、どういう風に日頃から恐怖を感じるのかも分からない。ただ、金色の瞳に酷い怯えが交じっているのはミケでもわかる。相当なものを見たに違いない。
「…任務中、怖くてロクに寝れなかったり、食べられなかったりして…早く帰りたかったから、ジジの言葉の裏をとらずに、ゆきちゃんのとこに来たんだ…」
それが、許されるか許されないかをミケには判断できない。結果を客観期に切り取ると、完了報告を怠り、任務を途中放棄したチェシャは悪いが、真実はチェシャはジジに利用され、ジジは逃走を計ったということになる。チェシャの能力を大きく利用して…
「…」
チェシャは、自らの弱い部分をミケに吐露した。それが、受け入れられるとも思っていない。他人には、理解しがたいことだ。だから、言葉にするのを躊躇ったのだ。
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