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こうして家族会議は終わった。
空は外泊から一旦病院に戻り、一週間程度、病状の観察を受けてから退院することになった。
栄一郎は名残惜しいと何度も言い、彼女を病院に送りに行った。
蒼は。
用事も済んだので、きまちゃんを片手に熊谷家を出ることにした。
なんだか息苦しくていられなかった。
空はこんなところに戻ってきて大丈夫なのだろうか?
そんな不安は大きいが、きっと栄一郎が払拭してくれるはずだ。
彼を信じよう。
この十数年間、彼女をそうして支えてきてくれたのだから。
荷物を持ち、玄関に行くと後ろから声がかかった。
「もう帰るのか?」
振り向くと陽介が立っていた。
彼はなんだか、ひどく疲れたような顔をしていた。
「陽介。……さっきはごめんね」
なんとなく気まずい。
今まで散々、彼に頼ってきたのに。
彼は、自分のことなんかよりも蒼のことを考えてくれているいい兄だ。
兄弟として蒼は、とっても信頼していた。
だけど、彼もまた熊谷家の一人なのだ。
そう思うと、複雑になる気持ちに嘘はつけなかった。
視線を外し俯く。
彼をまっすぐに見ることが出来ない。
「どうして戻ってこないんだよ?」
その質問には答えられない。
だって。
蒼だってよく分からないのだから。
戸惑って口を閉ざしていると、陽介は耐えかねたのか。
彼の腕を乱暴に引いて壁に押し付けた。
「蒼……っ!」
「陽介!?」
突然のこと。
こんな乱暴な彼を蒼は知らない。
いつも優しい頼れる兄。
啓介にしてもそうだ。
なんだか変。
蒼を取り巻く家族は変ってしまったのか?
めまいがした。
「離して……っ!」
「なんだよ?啓介には触らせておいて、おれはダメなのか?」
「違っ!そういうんじゃないよ!啓介とはちょっと喧嘩になって……っ!」
この状況をなんとか、切り抜けようともがいてみる。
壁伝いに身体を動かすと、それを見つけて陽介が強引に引き戻した。
「陽介!ちょっと!」
蒼も必死だ。
引っ張られてシャツの襟がはだける。
陽介はそこに、蒼が他の人間の所有物になっている証を見つけた。
「蒼!?」
「へ……?」
「恋人ができたのか?だから、帰ってこないのか!?」
はっとして首を押さえる。
関口が着けたキスマーク。
こんなところに……。
全然、気付いていなかった。
蒼はしどろもどろになった。
「陽介……、あの……」
陽介は、我を失っている。
もう、蒼の言葉なんかに耳を貸さないと言ったところか。
初めて見た恐い顔。
なんだか急に恐怖に襲われた。
初めてだった。
彼を恐いと思ったのは。
陽介は、やすやすと蒼の両腕を一つに拘束し、引きずり倒した。
「痛っ!」
「おれがあんなに忠告してやってたのに!こんなことになるなら、外に出すんじゃなかった!」
「な……っ?」
「帰さないよ。来いっ!」
「陽介……!」
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