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19 鎖9
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恐い。
恐怖で震えた。
もしかしたら、本当にこの家から出られなくなってしまうのではないか?
そんな考えがよぎった。
「陽介、離してっ!」
必死だ。
帰りたい。
関口のところに……っ!
「陽介っ!!」
半分泣きべそをかいていると、2階から「うるさいな~」と啓介が降りてくる。
「なんの騒ぎだよ?」
彼は修羅場と化した二人の様子に、唖然としている。
「陽介、なにしてんだよ!?」
慌てて駆け寄り蒼を解放する。
「啓介……」
「啓介!邪魔をするな!おれが苦労して繋ぎとめていたのに。他の誰のものにもならないように、おれだけを見るように苦労してきたのに。それなのに、こいつはおれの苦労なんてまったく知らない……。恋人なんか作りやがって!」
「え……?」
床に座り込んだ蒼は呆然とする。
繋ぎとめる……?
苦労して?
自分だけのもの?
どうして?
なにを言っているのだと思う。
陽介の発する言葉は意味が分からない。
日本語なのに。
どこか違う国の言葉に聞こえた。
「待てって。陽介」
こんなことになってしまうなんて。
思ってもみなかった。
側にあったきまちゃんを抱えて呆然と床に視線を落とす。
陽介の前で啓介が呆れた顔をしていた。
「いい加減にしろよ!あんた、いつまで蒼に首輪くっつけておく気だ?」
「な……っ?」
「そうだろうが。どうせ蒼のことを自分の所有物かなんかとしか思っていないんだろう?言葉と言う鎖で縛り付けて。蒼がどんだけ人恐怖症になってっか分かってんのか?お前の存在は重荷なんだよ」
陽介はいい兄ではないのか?
「洗脳っつーんじゃねえの?こういうの?自分の欲望だけのために蒼の人生犠牲にすんなよ!蒼が母さんの事件を未だに恐がっているのはあんたのその言葉がそうしてるんじゃないのか!?」
衝撃で身体がびくついた。
陽介はいい兄ではない。
ただ自分のために?
啓介の発する衝撃の言葉は真実なのだろう。
陽介は、返す言葉もなく啓介を憎憎しげに見つめていた。
「おれの友達が心理学とか勉強してて聞いたけど、子どもの虐待は一方的に親が悪いんだよ。蒼は、なにも悪いことないんだ。悪い子だったから母さんがお前を傷つけたわけではないんだから……」
啓介は蒼に向かって静かに語りかける。
しかし、蒼は混乱していた。
「おれの……せいじゃない?」
「そうだ。お前のせいじゃない」
「おれ、悪い子だったんじゃ」
「違う。お前はなにも悪いことをしていないだろう?母さんは精神の病気だっただけだ。お前のせいじゃないんだ」
啓介はうずくまっている蒼の側に歩み寄り、肩に触れる。
がちがち震えている蒼は泣いていた。
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