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「何億年前の話をしていやがる。」
今や、Ωの社会進出はまだ問題は残っているものの、夢ではないとされている。紫が知らない話とは到底思えない。
それともあれか、と嶋は毒づく。
「…学年首席様が、オレ達αに歴史と保健体育の授業でもしてくれんのかよ、ええ??」
嶋の吐息が、紫の鼻先にかかる。瞬間、どんっと嶋の身体が突き飛ばされる。
机と共に後方に引っ繰り返る直前…。
刹那、嶋は見た。
紫の瞳が、羞恥の色を帯びていた。
(…え゛。)
冷静な考えに至る暇なく、嶋は教室の床に強か背中をぶつける。
「痛ァッ‼?」
痛覚に声をあげ、嶋の思考はどこかにぶっ飛んだ。ついでに、市川の怒りがマックスに達したらしい。紫に拳を振り上げる。
「てめぇ‼αとかΩとかこの際、関係ねぇ‼智明に手ェあげやがって‼」
「良太‼」
木津が市川を羽交い絞めする。が、体格は僅差ではあるが市川のが大きいのだ。木津の拘束は長く続かないだろう。
「良太ァッ‼」
嶋の一喝は、教室全体の空気をぐわんぐわんと揺らした。クラスメート全員の目が、嶋に集中する。ごくり、と木津は知らず生唾を飲み込んでいた。…木津は、以前から嶋に聞いていた。嶋の身体には、純血のαの血が通っているのだと言う。だから時折、度を超したリーダーシップを度々発揮する。普段はよれよれっとしたおっさんじみた空気を垂れ流しているが、締めるところはちゃんとおさえている。嶋自身、無自覚ではあるが、彼は生粋のαだ。
「…紫。」
床に転がっていた嶋がのそのそと起き上がる。様子からして背中は痛めているようだが、他は無傷らしい。頑丈なのか、運がいいのか。
床にしゃがみこんだまま、嶋は佇むΩのクラスメートを見上げる。
「みんなの意見なんてたいそうな話、オレは語れねぇよ。…けどな、少なくともオレは、Ωであるお前を性的な奴隷として見てはいない。」
そうだな、と空咳を一つして、生粋のαは続ける。
「例え…わ、笑うなよ??例え、オレとお前がこの世界で二人っきりになったとしてもだ。お前がさっき言っていた通り、薬があってもなくても…だ。オレはお前が嫌がるなら、手は出さない。セックスしねぇで、子供も残さず、一人で死ぬよ。」
「…。」
賢いΩはとぼとぼと嶋へと歩み寄って来て、足元に屈みこんで、視線を絡み合わせる。
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