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「Hなこと、なんか知っている!?」
(ちっがぁぁぁう‼そんな馬鹿なぁぁぁ‼)
するり、と紫の温もりが離れていく。隣からの、刺すような冷めた目線が痛い。
「サイッッッテー…‼」
怒りのこもった静かな一言に、嶋は隣からそっぽを向く他ない。そこから数メートル歩いたところで、とんと肩に何かが触れた。丸い、球状のもの…。
「…そういうアドバイスの空振りは、僕以外にはやっちゃだめだよ??」
紫の頭を肩に乗せたまま、相手は喉仏を上下させる。
「…ハイ…。」
甘酸っぱい沈黙を嫌うかの如く、日暮の大群がどこかの木々の間で鳴き喚いている。寄り添う二人の影は、夕暮れのアスファルトの下、どこまでも長く続いていた…。
ややあって、二人はマンション近くにあるスーパーへと訪れていた。オレンジのプラスチック製買い物かごを持つのは嶋、先導し食材に鼻を利かせるのは同居人である。…スーパー入口手前まで、実はずっと手を繋いでいた二人だった。が、人目を気にしてか。紫が『それ以上、手を触り続けたらセクハラ』の一言に、あえなく若いαは繋ぐのをやめた。性別の種類が増えたこの世界、“セクハラ”は凶器に匹敵する強さを持っていた。
スーパー内は底冷えを覚えるほど空調がきいていて、これなら野菜等の夏に保存の温度管理が難しい食材も安全だと思えた。夕食前、という時間帯もあってか。店内にはたくさんの客が行きかう。小さな子供を連れた親子連れ。夫婦なのか、男女二人組。中年の主婦もいれば、家族と一緒に制服でうろつく学生もいる。…かと思えば、まだ仕事が終わっていないのか。ツナギ姿の男性二名が商品棚と睨めっこしている。…どうやら、職場への買い出しらしい。スーパーのBGMにかかっているのは、近頃の若手音楽アーティストの曲で、嶋は知らない。嶋が同居人に確認すると、どうやらΩお気に入りの曲でもないらしい。嶋は華奢な後ろ姿を追いかけながら、新鮮な曲に耳をそばだてた。
「…歯磨き粉、切れそうなんだよね。」
最後に紫が向かった先は、日用品の売り場だった。すでに買い物かごはパンパンになっており、嶋の片腕の筋肉は悲鳴をあげつつあった。紫を遠巻きに眺めつつ、αは商品棚を見遣る。嶋の目前に並んでいたのは、ボディーソープだった。その内一本を手に取って、眺めてみる。端っこに、『α用』と書かれていた。目をぱちくりして、嶋はまじまじとそのボディーソープの効能を目で読み上げてみる。
『特殊な香水が混じっています。絶対に外したくない、商談の会議・パーティーに‼あなたの新たなビジネスパートナーとしてぜひともご採用を‼』
「…へぇ。」
気の抜けた声をあげていると、その手からさっとボディーソープが抜き取られた。見ると、嶋より一回り小さな手で、同居人がボディーソープを取り上げている。責める眼差しに、嶋は瞬時に同居人の思考を読み解く。
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