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「ぁ…。」
「…っ」
二人の目が釘付けになる。紫が気配を忍ばせて、息をのんだのがわかった。
(触れたい…。)
嶋の手が、同居人の片腕に伸ばされる、刹那。
嶋の脳裏を過ったのは、携帯画面に映った、母親の名だった。
「‼」
パッと腕を引っ込める。唐突に、嶋は同居人から目を逸らす。賢い紫が、瞳を鋭く細める。
「ゆ…っ、紫ちゃんって本当、子供みたいだよな‼」
嶋は無理に明るい声を出して、無駄な思考を追い払う。…しめだした、はずだ。だが、耳を手で塞いでも指の股から声は絶え間なく聞こえてくる。
嶋しか聞こえない、顔も知らない誰かがかけた、呪詛。
『…親父やおふくろは、知らなくていい。これは、オレなりのケジメだから。』
『ごめん、紫。本当にごめん。オレが…オレが全部悪いから。』
『…恋なんてしない。…オトナになるまでオレの家族は、オヤジとおふくろの二人だけだから…。』
「手ェ繋ぐとかマジ勘弁だけど、まあ??…かわいく頼んでくれるんなら、おんぶくらいはしてあげても…。」
ヒュッと風を切る音がする。華麗なバックスイングを決めた紫は、渾身の平手打ちを相手の背中に送ってやった。
「いってェェェッ‼」
嶋の断末魔が、病院内に響き渡り、少し遅れて唇に人差し指を立てた看護師がやって来る…。
「だぁ~から、子供扱いして悪かったって、謝ってんじゃん。…紫ちゃんの荷物だって、途中からオレが持ってあげてるんだし。ほら。ほれ、ほぉ~れ‼」
やっと辿り着いた紫が住むマンション前。紫の着替え等が入ったリュックを宙で上下に揺らしてみせる同居人に、荷物の持ち主はこれでもかと眉をハの字にしてみせる。
「謝っている態度とは思えない。-15。力になってくれるのはありがたいけど、それ自分から口に出したら、褒めて欲しい願望丸見え。…小学生かよ。-15。」
「じゃあ、70点??へぇ…。紫ちゃんにしてはけっこうな点数くれる…。」
「加えて、嶋本人が大ッ嫌いなので-70。」
むぐぐ、と嶋は片眉を小さく上下させる。
「…てめぇな。喧嘩売ってんの??」
高飛車なΩは、鼻先で笑い飛ばしてみせた。
「これが喧嘩の叩き売りに見えないの??ボクちゃ~ん♪お兄さんいい脳外科知っているから、案内してあげまちょっかぁ~??」
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