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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
デート?11
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それとも私が信用できないか、と問われ、少年は何も言えなかった。そんなもの、信用できるわけがない。つい数週間前に出会ったばかりの相手を、どうしてそうも信用できるだろうか。だが、何故だろう。どこかでこの声を聞いたことがある気がするのだ。何もかもがどうでもよくなってしまうような心地の中で、この声を。
だからだろうか。普段ならば頑として首を縦に振らないような状況だったというのに、結局少年は流されるままに王城へと足を踏み入れることになってしまった。
王城内部へと続く大きな門で、門番に招待状らしき書状を見せる男の様子をちらりと窺い見ると、男の堂々とした素振りに対し、門番の方は何故だか酷く慌てた様子だった。ちらりと聞こえた、ロンター公爵閣下、という言葉から察するに、午前中のあの店で見せた書面に署名されているらしい人のことだろうか。聞いたことがない名前だが、王城の門番がここまで焦るということは、思っているよりもずっと有名な貴族なのかもしれない。
現実逃避にそんなことをぼんやりと考えているうちに、いつの間にか馬車が停まり、少年は男に促されてのろのろと馬車を降りた。そのまま、どうやら歩幅を合わせてゆっくりと歩いてくれているらしい大きな背を見失わないようにとついていく。男は時折振り返って様子を見てくれるから、はぐれることなど有り得ないのだろうが、それでも不安なものは不安だ。周囲には綺麗な服装の貴族らしき人物がちらほと見えていて、恐れ多いやら何やらで内心泣きたい気持ちでいっぱいになる。男を信用している訳ではないが、今は男以外に頼れるものが何もなかった。
だが、少年のその心境は、会場らしき王城庭園に辿り着くと全て吹っ飛んでしまった。
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