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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
デート?12
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広大な庭園の空に浮かぶ、幾多もの魔術燈籠。男曰く、魔術と錬金術を緻密に織り交ぜて作られたというそれらは、それぞれ異なった幻を宙に投影して舞っていた。見事な角を持った純白の一角獣や、大きな羽のような耳を羽ばたかせて飛ぶ姿が愛らしい不思議な獣、それぞれ赤と青と緑と橙色を纏った人型は、恐らくは四大精霊の姿を模した幻影なのだろう。それらよりも大きな燈籠からは、この次元には存在しないと言われているドラゴンの姿まで投影されている。
今挙げた燈籠から映し出される幻影たちは、どれも少年が息を飲むほどには美しく素晴らしいものばかりであったが、中でも目を引いたのは、庭園中央の高みに浮かぶ一際大きな燈籠だった。遠目からでも察するに余りある精巧な細工は、浮かぶ燈籠のどれよりも作りこまれているように見えた。だが、あの大きな燈籠は一体何を映しているのだろうか。この場における一番大きな幻影はドラゴンだが、あれを投影しているのは、左の方にある大きな燈籠だ。そして、中央の燈籠はそれよりも遥かに大きかった。
少年が内心で首を傾げていると、いつの間にか寄り添うように隣にいた男が、少年の視線の先を見て、ああ、と口を開いた。
「あれは星空を投影しているのだ」
「星空、ですか……?」
「見上げてみると良い。実際は、このような都会でこれほど見事な星は見えんよ」
言われ、空を仰いだ少年は、思わず感動の声を漏らしていた。
「わぁ……綺麗……」
それは、少年が今まで見たどの星空よりも美しい、輝く星で満たされた夜空だった。確かに都会であるギルガルドではこれほどの星は見えないだろうが、かつて少年が歩いた旅路の中でだって、ここまで見事な星空は拝めた試しはない。あまりの美しさに少年が、ほう、と溜息を吐き出せば、隣にいた男もまた、星空を見上げて目を細めた。
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