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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
金の王14
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「今となってはそう思っている者も多いが、あれは神話ではなく伝承だ。実際に起こったことなのだよ。神、という表現に関しては、他に良い言葉が見つからず、最も近い意味を持つだろう単語を選んだだけだろうが。まあとにかく、エインストラとは、その神が数多ある次元を監視し管理するために使っている生き物のことを指す。故に、エインストラには己が意思で自在に次元を越える力が与えられているのだ。他にも次元を越えることができる生き物もいるにはいるらしいが、それらには皆、例外なく制約がついている。例えば、隣り合う次元にしか行けなかったり、同じ法則で動いている次元同士しか行き来できなかったり、と言った具合にな。だが、エインストラは違う。この世でエインストラだけが、何の制約もなく全ての次元を自在に行き来できるのだ」
「は、はあ……」
少年は馬鹿ではなかったが賢いわけでもなかったので、正直に言うと男の言っていることの半分は理解できなかった。
「ふむ、少し難しかっただろうか。ではもう少し簡単に説明しよう。なに、言うほど難しいことではない。つまりは、普通の生き物は基本的にこの浮き球の世界を出られずに一生を終えるところ、エインストラは好き勝手に浮き球から浮き球へと水を泳いで渡ることができる、という話だ」
言いながら、赤の王が浮き球をつついた指を水に潜らせ、別の浮き球のところまで運んで見せる。
「中には、偶発的に生じた次元の隙間に飲まれて次元を越える者もいるが、それらは皆己の意思で次元を渡ったわけではないからな。その点、エインストラは自由に好きな次元を選んで飛ぶことができる」
「そして、神の目であるエインストラの瞳は、普通では見えないものを見ることができるとも言われています。一体その瞳に何が映るのかは判りませんが、一説によると、全ての生き物の魂の色や形が見えるとか」
「そ、そうなんですか……。エインストラって、とてもすごいんですね……」
あまり賢くない返答をしてしまったが、実際それくらいしか返しようがないのだから、仕方がない。
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