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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
金の王18
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「たまたま次元の歪に遭遇したときに、一度だけ。まあ、好き好んで経験するようなものではないぞ。あれは一種の臨死体験に近い。目が合った瞬間、私は本当に死んだと思った」
「武勇に優れたロステアール王をも、そう思わせるのですか……」
「それなりに武に明るいからこそ、だろうか。なまじ力量差が判ってしまうからこそ、その絶望的なまでの格差に恐怖するのだ。それから、私だろうと誰だろうと、ドラゴンにとっては人間という時点でおしなべて同じだ。全て同じ、道端の石ころにも及ばぬ存在だよ。だからこそ、あの黒竜がドラゴンではないと言い切れるのだ。あれには私の攻撃が通用するからな。そんなものはドラゴンとは呼べない」
赤の王の言葉に嘘はない。そのことはギルヴィスも良く判っていた。だからこそ、自分が思っていたよりも帝国の脅威が大きいことに、驚きを隠せないでいた。
「……それでは、仮にキョウヤさんがエインストラで、帝国の手に渡ってしまい、ドラゴンを召喚されてしまったら、この世界は帝国に滅ぼされてしまうということでしょうか」
ギルヴィスの問いに、しかし赤の王は首を横に振った。
「それは違う。まず、帝国の目的は恐らく五年前と変わらず、リアンジュナイルの中心にある神の塔を得ることだ。よって、彼らに世界を滅ぼす意思はない。そんなことをすれば、神の塔もどうなるか判らんからな。そしてこれはそもそもの話になるが、帝国にドラゴンを使役することなどできんよ。本当にドラゴンを召喚できたとしたら、そのヒトの領分を遥かに越えた行いに彼らは怒るだろう。いや、もしかすると怒りはしないのかもしれん。道端に石ころがある分には気にならんが、それが転がって足にぶつかったら邪魔だと蹴り跳ばす。それと同じ感覚なのかもしれん。だがどちらにせよ、邪魔だと認識された時点で終わりだ。この世界はドラゴンに滅ぼされる」
そこで、赤の王は深々とため息を吐いた。
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