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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
国王の招待7
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「良いからさっさと行け! 今生の別れでもあるまいに!」
名残惜しそうに少年の頭や頬を撫でていた王の後頭部を、レクシリアが引っ叩く。
(ひえぇ……この宰相様、王様殴っちゃったよ……)
想像していた国王と臣下の関係とは全く違う現状に少年は驚きやら何やらで混乱しかけたが、そう言えばあの錬金魔術師も似たようなことを国王陛下にしていたな、ということを思い出した。もしかすると、赤の国ではこれが普通なのかもしれない。
殴られた王の方はと言うと、特に怒った様子はなかったが、レクシリアに少しだけ恨めしそうな顔を向けた後、最後に少年の頭をもうひと撫でだけしてから、部屋を出て行った。
「ったくあの馬鹿」
呆れたような呟きは、レクシリアのものである。はぁ、と盛大な溜息をついた彼は、次いで少年の方へ目を向けた。
「あー……、結局、口調の方はいかが致しましょうか?」
十人中十人が大変な美形だと認めるだろうレクシリアに、改めてにこりと微笑み掛けられ、美しいものに弱い少年は少しだけ惚けた表情をしてしまった。
(あの人ほどではないけど、やっぱり宰相様もとても綺麗な方だなぁ……)
仮に少年のこの言葉が薄紅の国の女王の耳に入ることがあれば、彼女は盛大に顔を顰めたことだろう。レクシリアが美しい顔立ちをしているのは事実だったが、赤の王の方は、整ってはいるものの美しいという表現が似合うような顔ではなかった。まともな目と感性を持っている者であれば、必ずレクシリアの方が美人だと認識するだろう。
「キョウヤ様?」
「え、あ、すみません。ええと……、その、宰相様のお好きな方で、大丈夫です」
「そうですか? キョウヤ様のお好みに合わせますが?」
「いえ、本当に、宰相様の話しやすい方で大丈夫なので……」
レクシリアは、少年の言葉に少しだけ悩むような素振りを見せてから、それじゃあ、と口を開いた。
「人目がないときは敬語取っ払うか。その方が俺も楽っちゃ楽だし、お前だって目上の人間に敬語使われるのは窮屈だろ」
レクシリアの申し出は願ってもないことだったので、少年はこくこくと頷いた。
(ああ、この人はまともな人だ)
誰と比べての感想かについては、述べないでおこう。とにかく、少年の心情を汲んだレクシリアの配慮は、少年の中の彼への好感度を上げるには十分なものだった。
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