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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
国王の招待8
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「この前は会って早々に倒れちまってろくな挨拶もできなかったからな。改めて自己紹介といくか。俺はレクシリア・グラ・ロンター。肩書が色々あってどれを言えば良いのか困る所だが、そうだな。グランデル王国宰相と、ロンター公爵家の当主をしている、ってことだけ知っといて貰えば、まあ良いか。よろしくな」
そう言って差し出された手に、少年は一瞬どうしようかと困ってしまった。きっと握手を求められているのだろうけれど、他人に触れるのは好きではないのだ。だが、相手は目上の人間である。我慢して触れるべきだろう。
そう思った少年だったが、彼が動き出す前にレクシリアは手を引いてしまった。怒らせてしまったかと慌ててレクシリアの顔を見れば、どうやらそんなことはないらしいが、彼はなんだか少し困ったような笑みを浮かべていた。
「そういやお前、他人に触られるのはあんま好きじゃねぇんだっけか。悪いな」
「え、あ、いえ。……あの、なんで、知っているんですか……?」
「ああ、ロストが言ってた」
「あの人が……」
呟いてから、少年はまだ自分がきちんと名乗っていないことに気づいて、慌てて頭を下げる。
「申し遅れました。僕は天ヶ谷鏡哉と言います。ギルガルド王国で、刺青師をしています。ええと、……よろしくお願い、します……?」
よろしくと言われたからよろしくと返しはしたものの、一体何がよろしくなのかは判らない。その気持ちが表に出てしまったのか、変に疑問符のついた言い方になってしまい、それを聞いたレクシリアは面白そうに笑った。
「なんで疑問形なんだよ。今後も俺らとの交流は続くわけだし、そこはよろしくお願いしますで良いだろ」
「え、いや、…………あの、」
「ん? どうした?」
「……ええと、その、どうして、僕と皆さんとの交流が続くのでしょうか……?」
この場合の皆さんというのがどの程度の範囲を含んだものなのかは判らなかったが、取り敢えずそう言っておけば通じるだろうということで、少年はその単語を選んだ。
「どうしてって……」
不思議そうな顔をして首を傾げたレクシリアは、まじまじと少年を見て、そして、
「だってお前、ロストの恋人になるんだろ?」
「………………は?」
一国の宰相を相手に間の抜けた声を出してしまったが、勘弁して欲しい。それほどまでに、レクシリアの台詞は意味不明だったのだ。
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