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はじまり
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またしても一人になりこれから何をしようか考える
いつもだいたい暇なのだが、いつもは未読の本を読んでいる。けれどそれは昨日読んでしまったし昨日読んだものを今日読み返すのも......。
すでに乾いている肩まで伸びた少し長い髪の毛を耳にかけながら考える。
と、ここで昨日に続き長方形の端末が通知を知らせて来た。
珍しい、と思いつつソファーに投げ出されていた端末を手に取る。内カメラの横にある緑色のフラッシュの点滅がさらに通知を知らせた。
「......」
画面を無表情で眺める豹。
数十秒画面を眺めたところで次の行動が決まったのかようやく動き出す。
寝室のある部屋へと移動し先程着たTシャツを脱いだ。
余計な肉はついていない、けれど筋肉があるわけでもない、程よく引き締まった生白い体。半裸の状態でクローゼットを開けこの後向かう場所に合わせるように服を物色する。この後向かう場所、否、"向かわなくてはいけなくなった場所"は制服では行けないし、かといってラフすぎる格好で行くのも違う。
クローゼットの端のほうに追いやっていた黒の革ジャケット。それはある人からの贈り物。自分の趣味ではないその服を手に取り豹はその服をベッドの上に置く。これから向かう場所にはこの黒の革ジャケットがよく合う。これを数ヶ月前に贈ってきた相手に少し感謝が芽生えた。ほんの少しだけだが。
メインで着る服が決まれば後は適当にジャケットに合う服を見繕う。
白い長袖のシャツとデニムのスキニーを取り出し着替え、ジャケットを羽織った。
そして最後に普段は着けないピアスを着けた。
耳元で赤く輝くストーンは一見ルビーのように見えるが、それは赤色の琥珀。シンプルに光沢を持つ琥珀はチラチラと銀色の綺麗な髪の間から見え隠れし、豹との見た目のアンバランスさに目を奪われる人も少なくないんだとか......ちなみにこれは同じメンバー談。
財布、スマホ、鍵、学生証、最低限の物をジャケットのポケットに入れ豹は部屋を出た。
ガチャンと自動ロックしたドアの音を聞きそのまま大理石の床を歩く。
今から向かう場所に急ぐ理由はないのだが普段よりも少し早く前に踏み出す足。
「ちょっといいですか?豹さん」
ちょうどロビーを通りかかったところで声をかけられる。
聞き覚えのない声に足を止め振り返るとそこに居たのは眼鏡をかけた落ち着いた印象の男子生徒。
あぁ、確か......と豹は昨日の記憶を呼び起こす。
「キミは確か昨日玲央と一緒に同行していた子ですよね?僕に何か用事でしょうか?」
今、豹の目の前に居る眼鏡の男子生徒は昨日玲央と一緒に居た、生徒会に選出された子の中の一人。生徒会の中のどの役職に選出されたまでは知らないが。
「はい。今年度生徒会書記に選出された、三年の蜘出光太と言います。」
「おや、先輩だったのですね。これは失礼しました。」
「気を使って頂かなくて大丈夫です。この学園では年齢に序列はありませんし、それは豹さんもお分かりでしょう?」
「えぇ。承知しています。けれどこうしてお話するのは初めてでしょう?礼儀は弁えていますよ。それで、僕に何か用でしょうか?」
「......そうですね。では本題に、豹さんも薄々勘づいていると思いますが今日俺が来たのは豹さんを生徒会へ勧誘するためです。」
率直に目的を伝えてくる蜘出。
「玲央といいキミといいどうして僕をそんなに勧誘したがるのか、理由をお聞きしたいですね」
生徒会に入るつもりは毛頭ないけれど理由は気になる。
豹は自身で、入ったところで何か役にたてることはない、と思っている。
自分自身の性格は自分がよく知っている。自分は人の上に立つことは好きではない、どちらかというと苦手なほうだ。それに面倒ごとは好きではないないし、よく知りもしない生徒の為に自分を犠牲にもできない。
いつも穏やかに微笑んでいる豹だが、意外とドライな部分も時たま垣間見える。
「......それは、注目度をより集められるからです」
「そう言ったのは玲央ですね?」
「......えぇ玲央"様"です」
「成る程。それであれば余計に拒否させて頂きます。僕は注目されるのはあまり好きではないし、それはあなたも分かっているでしょう?そう玲央に伝えて下さい。それと人伝ではなく直接来てください、とも。それでは失礼します。」
「ま、待ってくださいっ!!」
「すみません。今から用事があるんです」
話を切った豹に、まだ話しかけてくる蜘出。
しかし早く行かないと今から向かう場所にいよいよ間に合わなくなる。
少し豹らしくない対応に2人を見守っていた生徒達も緊張ぎみに様子を伺う。
一方豹自身も少し反省していた。あまり関わりのない生徒と言えど今の行動は無下に扱ってしまった、と。しかし一般的に言えばそんなことはない。どちらかと言うと先に無礼を働いたのは蜘出の方だ。今日の豹の格好から分かるように、今から豹は出掛けようとしていた。それを自分の都合で勝手に止めたのは蜘出の方で本来であれば無視されても致し方ない状況。
蜘出の方もそれに気づいたのか次は引き止めずに、すみませんでした、と豹を見送った。
多分だが一番ハラハラしていたのは2人を見守っていた生徒。
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