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熱誠カタルシス -夏の日々-1
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翌日から、颯斗は綾世に会うために櫻木家に通い始めた。
綾世は家事の全てをこなし、武道の稽古をし、道場の手伝いまでしている。
当然遊ぶ時間など無いのだが、それでも颯斗が訪ねると迎え入れてくれた。
そのうち颯斗も道場の掃除を手伝い、祖父さんに護身術の稽古を付けてもらうのが日課になった。
相変わらず綾世はほとんど無表情だが、祖父さんが忙しい時は代わりに稽古してくれたり、颯斗の分の食事も用意してくれたり、相手はしてくれる。
綾世はほとんど自分の事は話さないけど、祖父さんからは、いろいろと聞くことが出来た。
それが何よりも収穫だ。
小学校低学年の時に両親が事故で亡くなったため、祖父さんに引き取られ二人暮しになった事。
名門の聖藍学園に通っていて、春から寮生活を送っている事。
成績は優秀で、毎年クラス委員をやっている事。
祖父さんは、孫バカ全開で綾世の事を話してくれる。
祖父さんにとって綾世は自慢の孫で、とても大切な存在なのだとよく解る。
颯斗はもっともっと、綾世の事が知りたいと思った。
午前中、綾世は合気道の小学生低学年クラスを、祖父さんと一緒に指導している。
子供たちに『綾先生』と呼ばれ、大人気だ。
でも颯斗が驚いたのは、そこでの綾世の笑顔だった。
チビ達に向けられる笑顔は、いつもの無表情の綾世とはまるで別人。
穏やかで、優しい。
それまで気が付かなかったけど、笑うと両頬にエクボが出来る。
それが整った綺麗な顔を、幼く見せた。
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