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熱誠カタルシス ー友達ー4
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「食欲ないの…?」
律基が颯斗の顔を覗き込んだ。
昨日の昼休みに、突然『友達になってください』と声を掛けてきた律基は、その後休み時間の度に顔を出し、今日のお昼もさっそく弁当持参でD組の教室にやって来た。
颯斗は弁当の蓋を開けただけで、手を付ける気がしなかった。
ここのところ、ずっとそうだ。
「ご飯ってさぁ、誰かと食べると美味しいんだよね~」
「………」
律基は、少し身を乗り出す。
「まぁまぁ、騙されたと思って食べてみなよ。それとも、僕が一緒じゃますます不味いとでも言うつもり?」
唇を尖らせ、軽く睨まれる。
律基は、よく喋る。
黒目がちの大きな目はクルクルとよく動き、そしてよく笑う。
お陰で、気を使うこと無く自然に振舞える。
苦笑いを返しつつ、仕方なくウインナーを口に運ぶ。
昨日までは砂を噛むように不味く、飲み込むようにかき込んでいた弁当が、不思議と今日は味を感じる。
「どうだ、美味しいだろう!」
律基が、ヘヘンと胸を張る。
その仕草が可愛らしい。
「まるでこの弁当を、川那辺が作ったみたいな言い方だな」
「えヘヘ、じゃあこの玉子焼きあげるよ!」
表面が、少し焦げた玉子焼きを差し出す。
「まさか、川那辺が作ったの!?」
颯斗が、目を丸くして尋ねると
「まっさかぁ~、母さんの定番自信作!」
と、答えた。
やっぱり…そんなわけ無いか。
「サンキュ」と、口に放り込む。
ふわふわで、出しの旨味と砂糖のほんわりと優しい甘さ。
「甘い……」
「それが美味しいんじゃん!」
でも颯斗は、この味に似ている玉子焼きをどこかで食べたことがある。
どこでだったかな…。
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