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熱誠カタルシス ー偽りと、真実。ー15
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顔を上げた律基の表情は硬く、心なしか顔色も良くない。
目のふちが赤くクマがあるのは、気になって、夜寝れなかったのだろうか…寝不足かな…。
「さっき綾世の所に行って来た。川那辺の言う通り、会えたよ。ありがとう」
「あ、あの…幹君。 場所、移そう……」
浮かれる颯斗とは対照的に、律基は慌てている。
「移すって…。お前、足……」
「俺達が遠慮するよ」
颯斗の言葉を遮るように、律基と談笑していた数人が申し出てくれた。
「え…、でも……」
「ごめんねぇ~。ありがとっ!」
それは申し訳ないと颯斗が発する前に、律基が可愛らしくにっこりと笑い、両手を合わせて感謝のポーズをする。
さっきまでの颯斗に対する態度からの、変わり身の早さに唖然とする。
けど、この素直な屈託の無さが、みんなに愛されるのかもしれない。
二人を残し、彼等はそれぞれに散っていった。
「このクラス、居心地いいな」
「でしょ? でも、幹くんのクラスも悪くは無いでしょ?」
「うん。川那辺のおかげだよな…。 あのさ、俺…川那辺を怒ったり責めたりするつもりは無いよ。でも…何で綾世と従兄弟だった事とか、話してくれなかったのか…それだけは知りたい。教えてくれないか…?」
律基は唇を噛み俯いたけれど、決心したように颯斗を真っ直ぐに見つめた。
「最初ね、綾ちゃんに『幹颯斗君の様子を見てきて欲しい』って、頼まれたんだ。 『外部入学だから、ちゃんとやっていけてるか心配だ』って…」
綾世が……?
綾世が俺のことを心配してくれていたなんて…。
「綾ちゃんが他人の事を心配するなんてこと、今までなかったから…。だから、僕もどんな人なのか知りたくって…。本当はD組にこっそり様子だけを見に行くつもりだった。けど…幹くんがクラスのみんなにシカトされてるって、西嶋くんに聞いて……。放っておけないって、思った。……僕も昔、いじめにあった時はすごくつらかったから…一人で寂しそうに窓の外を見てる幹くんを、どうしても放っておけなかった。そしたらすごくいい奴なんだもん! 綾ちゃんの事とは関係なく、友達になりたいって思ったんだ」
颯斗は、黙って聞いていた。
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