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伝える、ということ。ー綾世side-ー 1
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「だから、仕方がないんだ」
「なんなんだよ、それは~~!」
夏休み。
寮生の綾世は自宅に、帰省していた。
颯斗は、そんな綾世と少しでも一緒にいられるように、櫻木家のご近所である祖母の家に泊まり込んでいる。
そして、今日。
一緒に出掛ける約束をしていたのだ。
人付き合いが皆無な綾世にとって、身内以外の誰かと出掛けるのは初めてのことだった。
けれど当日の朝になって、合気道の師範である祖父が、どうしても出掛けなくてはならない事情ができてしまった。
突然の事だったため、指導スタッフの人数の都合が付かず、やもうえず午前中の小学生クラスの稽古を綾世も担当することになったのだ。
家業のピンチ。
有段者の綾世が手伝いを務めるのは当然だ。
だから、出掛けるのは中止。
そもそも、どこで何をするかといった明確な目的が在ったわけではないのだから、問題は無い…。
そう、思っていたのだけれど……。
今朝、綾世が断りの電話をする前に颯斗は約束の時間より随分と早くに櫻木家にやって来てしまった。
そして、道場で稽古の準備をする綾世に事情を聞き、今に至っている。
颯斗は道場の上がり口の板の間に、腕を組み胡坐を掻いている。
その顔は、あからさまに不機嫌だ。
その前に立ち、綾世は小さくため息を吐いた。
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