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純真メランコリー 2
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聖藍学園は総ての学生に放課後の部活動を課している。
颯斗はサッカー部に入部希望だった。
けれど、入学早々綾世のことでそれどころではなかった。
そのため、すっかり出遅れてしまって団体競技の部活動に入部するタイミングを失ってしまった。
合気道と同じ日本武道だという理由で、綾世は空手部に籍を置いている。
ならば、自分も空手部に入部しようとしたものの『綾世が居るから』という不純な動機に、いつも以上に綾世に冷ややかな視線を向けられて断念した。
「走るのは嫌い?」
どうしようかと、途方に暮れる颯斗に綾世が訊いた。
「…颯斗と一緒に走ってて、すごく気持がよかった」
「え?」
「颯斗にぐいぐい引っ張られて、スピードについて行くのがやっとのはずだったのに…体が軽くて…。あの時、走るのが楽しいなんて初めて思った…」
「えっ?えぇっっ!?」
綾世と一緒にそんな全速力で走った事っていったら…。
「それって、もしかして初めて会った時のこと!?」
真っ直ぐに綾世へと視線を向けた。
ブルーグレイの澄んだ瞳に吸い込まれそうだ。
微かにその瞳が細められ、うっすらと桜色の薄い唇の口角が上がる。
表情に乏しい綾世が、最近たまに颯斗に見せてくれるようになった顔。
綺麗な微笑み。
新しい一面を知る度に、颯斗はますます綾世に惹かれる。
「そう。先に走る颯斗は活き活きしてて、僕と同じように楽しそうに見えた」
去年の夏。
もぅあれから、1年も経つ。
そのことを綾世がしっかりと憶えててくれたことが、堪らなく嬉しい。
あの時、颯斗が楽しくてしょうがなかったのは、きっと繋いだ手の先に綾世が居たからだ。
だけど、それでも確かに言える。
「走るのは、大好きだよ!」
颯斗の答えに綾世が小さく頷いた。
「じゃぁ、陸上部なんてどうだろう? 颯斗に向いてるような気がするよ」
綾世のその言葉で、単純な颯斗は陸上部への入部を決めたのだった。
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