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純真メランコリー 13
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律基のボソリとした呟き。
「あっ、いや…。ごめん、気にしないで!」
訊き返そうとした颯斗の言葉を遮り、律基が笑顔を作る。
「それより!最近ずっと雨だから、幹くんまさか自転車で通学してないでしょ?」
突然の話題転嫁。
颯斗の家は商店街の小さな中華食堂だ。
本来なら、私学に通わせてもらうような裕福な家庭ではない。
でも、誰もが受かるはずないと思っていた難関校である聖藍学園に合格し、本人の熱意もあって、私学に通わせてもらっている。
家庭の経済負担を少しでも軽くできたらと、天気のいい日は片道1時間以上の道のりを自転車で通学している。
「うん。流石にこう雨続きだと、バスだけど…?」
それがどうしたというのだろう?
「じゃぁ、なんで綾ちゃんと一緒に帰らなかったの?」
「あっ!」
しまった!
寮生の綾世と憧れのバス通学できたじゃないか!!
「うぁぁぁあああ!めったにないチャンスだったのに!!」
「ほんとだよ!なにボヤボヤしてんの!」
律基が強い口調で、突っ込む。
なんだよぅ……。
「そう言う川那辺だって、なんで一緒に帰らないんだよ…」
颯斗の言葉に、律基はため息を漏らす。
「僕だって帰れるんだったらそうしたかったよ。二人のこと気になるし…。でも、ピアノのレッスンがあるから…仕方がないじゃん…」
律基は普段から掛け持ちの部活やら習い事に忙しい。
「今から追いかけたら間に合うと思うか?」
「え…?」
ただでさえ大きい律基の目が、さらに大きく丸く見開かれる。
「バスの時刻表的にはギリギリなんだけど…雨だし……」
「あっ!雨の日のバスは大体予定時刻に遅れる!!」
颯斗が言いたいことを察した律基の表情が明るくなる。
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