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純真メランコリー 37
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落ち込んだ気分のまま帰宅した。
翌日の土曜日も何もする気になれず、午前中の部活練習までサボってしまった。
ダラダラと過ごす颯斗を見かねた母親に、店の手伝いを言い渡される。
小学生の頃は「働かざる者食うべからず!」と言われ、よく手伝いをさせられたものだ。
今は、弟が店をよく手伝っていて、そんなに広くはない中華食堂では人手が十分足りている。
けれど、余裕があるわけじゃないのに高い学費を払って私学に通わせて貰っている立場の颯斗にすれば、拒否する権利などないのだ。
それに、暇無く動き回っている方が余計なことを考えなくてありがたかった。
夕時から夜にかけての忙しいピークを終えた頃、賄いを食べていた颯斗に祖母から電話があった。
Γ櫻木のお祖父さんが倒れた…」と。
つまり、綾世の祖父さんが倒れて救急車で運ばれたらしいのだ。
時刻は夜の9時を回っている。
綾世に連絡を取ろうと電話をしてみても、案の定、自宅には誰も居ない。
綾世は携帯電話を持たないため、律基に連絡を取る。
病院だから繋がらないかと思っていたけれど、2コールで電話に出た。
律基はちょうど飲み物を買いに病室を出て、ロビーに居たらしい。
祖父さんは病気ではなく、どうやら過労だということだった。
一応検査するらしいけれど、大したことがなくてよかったと胸をなで下ろした。
けれど、律基の綾世に対する言葉が気になった。
様子がおかしいらしいのだ。
祖父さんは、綾世の目の前で急に倒れた。
その時綾世はひどく取り乱し、櫻木家に居たマークがすぐに救急車を呼んで、川那辺家へも連絡をしたそうだ。
あのしっかり者が、その間ずっと立ち尽くし何も出来ずにいたらしい。
そして祖父さんが無事だと分かった今も、綾世はひどく落ち込んでいる様子なのだという。
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