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純真メランコリー 73
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Γあんな綾…、初めて見た……」
「……颯斗君。綾世が…ごめんなさいね」
静さんがおずおずと声を掛け、謝ってくれた。
「……いえ。…俺……嫌われちゃった…かな………」
あの冷たい眼。
信じてくれていたのに……綾世を裏切った。
あれは、颯斗に向けた軽蔑の瞳だ。
颯斗の足元には、中身が散乱した買い物袋が落ちている。
綾世が買って来た……さっき、落とした物。
跪き、それらを拾う。
「…こんなにいっぱい……誰のために…だよっ……!」
やっぱり話してしまったことは、間違っていない……!!
颯斗は立ち上がると、二階へ駆け上がった。
綾世の部屋の麩は、当然閉じられている。
その向こうに綾世が居るのが分かっているのに、またあの冷ややかな瞳を向けられると思うと、怖くて開けることができなかった。
そっと麩に手を当て、隙間に口を寄せる。
「綾世!勝手に話をしたのは悪かった。でも俺、間違ったことはしていないと思う!」
部屋の中からの反応はない。
「ちゃんと話し合うべきだ。じゃなきゃ、誤解したままじゃ可哀想過ぎるよ……祖父さんも……綾世だって!」
「可哀想……?」
綾世の呟きが聞こえた。
小さな声が聞こえるほど、襖一枚を隔てたすぐそこに綾世は居るのだ。
口を麩にくっつくくらいに近づけ、部屋の中へ向かって話す。
「ここん家は、いっつも和菓子しか置いてない。でも…綾世は甘いもの苦手で、煎餅しか食わないよな。なのに、あんなにいっぱいの羊羹とかかりん糖とか、あれって誰のために買って来たんだよ?!」
綾世が大量に買い込んできた甘い和菓子。
あれは全部、甘党の祖父さんのためだ。
颯斗を追って来た響さんが、階段の上り口の廊下で立ち止まり、心配そうな顔で見守っている。
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