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第1章 マクヒョン
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「ジニョンイ、ドラマの予告みたんだけど」
「え? あ、ありがと」
マクヒョンから電話が来ることは滅多にないし、取った瞬間、あんにょん、とか、元気、とか、挨拶もなくいきなりボソボソと言う。
掛けてきたくせに。少しの沈黙。
CM見てくれたって、ありがとうで良かったよね?
「マクヒョン? どうしたの?」
「ううん……いい感じだね」
「ほんと? よかった」
マクヒョンとはたまにカトクでメッセージのやり取りはするけど。マクヒョンの返信はいつも遅いし、長文を長くやり取りすることもあんまりない。
会ったのは数日前で、話すのはそれ以来だ。
だけど、よかったって言うために、わざわざ電話をくれたって訳じゃなさそうだ。
「マクヒョン?」
「んー?」
「なに?」
「べつに」
電話かけてきて喋らないとか、反則じゃない?
「なんか怒ってんの?」
「……いや」
「なに?」
「いい感じだね」
「で?」
「べつに」
いい感じ、ならカトクでいいのに。
「家行っていい?」
「えっ? 今? あした会うでしょ」
「だめなの?」
マクヒョンは不満げな声で唸る。やだし、ダメだし。
「つまんないの」
「知ってるし」
僕が面白い人間じゃない事なんて、とっくに知ってるでしょって思う。
喧嘩するために掛けてきたんだろうか。ほんと。
「なら、うち来る?」
「えっ?」
急な提案で、びっくりした。
「あした会うのに?」
「だから、それがなに」
「いや」
ドラマ撮影の合間を縫って、日本での活動の準備をしてる。もう撮影も始まってるし、コンサートももう直ぐだし、役のためのダイエットもしてる。
正直、イアンとジニョンを行き来して疲れていて。仕事のない余白は、1分でも長く眠っていたい。
僕が忙しくしていることはみんな分かっているから、それなりに気を遣ってくれるし、遊びの誘いなんて、もってのほかだ。
このヒョンを除いて。
「来なよ、うち」
「やだ、もううちから出たくない」
「え? もう寝てんの?」
「寝てないけど、ソファでダラダラしてる」
今日も明け方からたっぷり撮影をして、さっき戻ってきた。シャワーして、力尽きてソファに寝転んだ所だし。今からどこかに出かけるなんて、ありえない。
ソファに寝そべってテレビを見て、だらだら、このまま、気が済むまでだらけた後、ベッドに移動して眠る予定だ。
「疲れてんだ」
「んー」
「つまんないの」
「なら、他誘えばいいでしょ、ベミとかユギョミとか」
勝手に電話してきて誘ってきて、つまんないとか、ほんと勝手だし、酷くない?
「ジニョンイと遊べなくてつまんない。ジニョンイと遊びたかったのに」
「……ふうん」
「ジニョンイ、今どんな顔してんの?」
「はっ?」
どんなって、つまんないって僕の性格を批判されてるんだと思ったのに、僕と遊びたくて、遊べないからつまんないって言われたから。ちょっと嬉しくて、にやにやしてる顔だよ。
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