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04.告白
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「あのさ」
大きな瞳。
色素が薄くて、瞳の色は灰色かかっている。
そんな彼の瞳も好き。
「おれ。拓のこと好きだった」
「え?」
「本当は、今でも好きなんだと思うけど。いや。知っている。山崎と同じ職場でうまくやっているって聞いているし。おれが入り込む余地なんかないのも知っている。だけど。ずっと胸に抱えてきた気持ちが。どうしようもなくて。ごめん」
慌てると言葉数が多くなるが。
結局、語尾は小さくなる。
拓は、じっと十文字を見ていたが、視線を伏せた。
「ごめん。十文字」
「いや、あの知っている。答えは知っている……」
「違う」
「え?」
今度は、十文字が問い直す番。
「おれ、知っていたのに」
「え?」
拓は、視線を伏せたまま続ける。
「おれ、知っていたんだ。十文字がおれのこと特別に思ってくれているってこと。なのに。見て見ぬふりをして、甘えてばかりでごめん」
「いや。そんな。え?知ってた?」
「うん」
なんだ。
そうなの?
肩の力が抜ける。
「ごめん」
「拓……。ごめん。おれがはっきりしないから。拓にも辛い思いさせたね」
田口と一緒だ。
自分の気持ちは相手に伝わっている。
本当だったのか。
「おれが悪いんだ。十文字の好意に甘えていたんだから。ごめんなさい」
拓は、そう言って頭を下げる。
「山崎とはうまくいっているんだろう?」
「山とは……。高校の時に喧嘩別れして、ずっとそのままだったんだ。だけど。二年前に、たまたまなんだよ。偶然、おれの病院に山が就職してきて。本当に驚いた。なかなか仲直りできなかったけど。今は何とかやっているよ」
「付き合っているんだろう?」
「うん……」
拓は、泣きそうだ。
そう。
こういう悲しい顔をさせたくないから。
逃げてきた。
だけど。
自分の気持ちは彼には伝わっていた。
やっぱりそうだったんだと自覚する。
「いいんだ。うん。すっきりはしないよ。おれだって、そんな安易な気持ちじゃないんだから。拓が山崎と付き合っているんだって聞いたから『はい、そうですか』とは言えない。少し気持ちの整理付けないと」
「そうだよね。それはそうだよね」
だけど。
「でも、こうしてまた再会したのって、何か理由があると思うんだよね。だから、いろいろ考えて。はっきりさせたほうがいいんだなって思って。ごめん。嫌な思いさせたね」
「ううん。おれもきちんと気持ちが聞けて嬉しかった。十文字のこと、嫌いじゃないんだ。再会した時に、ああ、また友達できたらなって思ったし」
友達か。
ぐさりと来る言葉だけど。
いいじゃないの。
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