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「すまなかった。」
受付へ戻ってきたおれたちは、財津さんの謝罪を受けた。
「財津さん、頭を上げてください。」
風見さんが、財津さんに話しかけた。
「大吾くんは無事ですし、ここで話すことではありません。」
「あ、ああ。そうだな。」
大吾くんは、財津さんの足元に走っていった。
「あのね!あのね!だいご、にんじゃしたの!」
「ああ、忍者になったんだな?」
「うん!」
小さな体を抱きしめた財津さんは、泣き笑いを浮かべた。
「おまえ・・・どうやって新宿まで来たんだ?」
「ワォン!」
プハッ。
「ちんじゅく、にぃちゃいるの!」
「え?何で新宿なの?」
光太郎くんの声が裏返った。
「あれ・・・ちず・・・。」
「ん?」
山田さんが微笑んだ。
「大吾くんの地図はこれだよね?」
おれは、預けていた荷物の中から地球儀を取り出すと、大吾くんに渡してあげた。
「ふふ、地球儀のことなのね?」
「はい、これ、大吾くんの地図なんです。」
山田さんは頷くと、美湖ちゃんのところに行った。
「・・・もう、勝手に出ちゃいけないよ。」
地球儀ごと大吾くんを抱きあげた財津さんは、深々と頭を下げた。
「ご迷惑をお掛けしました。」
何があったのかは分からないけれど、肩を落としたおじさんをこのまま帰していいのか、智樹は自答した。
「・・・良かったら、ワタシのお店にいらっしゃいません?開店前なので、ゆっくり話し合われてはいかがでしょう?」
撫でていた美湖ちゃんの頭が、ぴょこんと持ち上がった。
「やまやさん、おみせやさん?」
「ええ、そうよ。・・・そうね、チョコレートとオレンジジュースならあるわ。」
「いく!」
即決した美湖ちゃんに、みんな笑った。
「お邪魔じゃないですか?」
風見さんの言葉に首を振った。
「いつかご招待したいと思っていたの。」
そう言って微笑むと、杉さんが頭を下げた。
「ありがとうございます。是非、お邪魔させてください。」
財津さんと風見さんに何かあっている。
小夜は、きちんと感じ取っていた。
多分、このまま別れたら、財津さんと風見さんの間には溝が出来るような気がした。
だから、どこかできちんと話をして欲しかった。
「大吾くんも、もう少し美湖ちゃんと遊んでくれる?」
「うん!」
財津さんは困ったように眉を下げたあと、山田さんに向き合った。
「重ね重ね、お世話になります。」
「はい、お世話されちゃってください。」
そう言って、山田さんは奏太さんの手を握った。
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