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無人のフロントの前にあるエレベーターのカードリーダーに、トオルさんはカードキーを当てた。
動き出したエレベーターが迎えに来て、静かに乗り込む。
繋いだままの手がじんわりと熱くなって、手のひらをズボンで拭きたくて仕方がなかった。
心臓が口から飛び出そう!
やがて開いた階の一番端に、トオルさんの泊まっている部屋があった。
「どうぞ?」
扉を大きく開いて、にっこりと笑ってくれた。
あ、あぁ!!
恥ずかしい!!
眩しくて、慌てて中に入った。
「き、れいなホテルだね。」
「ん、リフォームしたてらしいよ。」
狭いお部屋だけど、清潔感があった。
ほんの数歩歩くと、トオルさんが寝たベッドがある。
やけに眩しくて、貴志は慌てて俯いた。
「座って。コーヒー淹れるから。」
ベッドに追い立てられて、ますますドギマギした。
小さな机の上に置いてある電気ケトル。
お水をペットボトルから注いで、スイッチを入れた。
マグカップは1つ。
トオルさんは、インスタントのコーヒーを入れて、ちょうど沸いたお湯を注いだ。
ふんわりと立ち上るコーヒーの香り。
温かな湯気が、小さな机の前の大きな鏡に張り付いて曇らせた。
トオルさんが、俺の座るベッドの横に座って、ギシリと生々しい軋む音がした。
ドキドキしすぎて、手が震えた。
「緊張しないで。お互いのことを話そう?」
ガチガチになった背中を撫でられて、そっと顔を窺った。
やだやだ!
恥ずかしすぎる!!
弧を描く口元までしか見れなかった。
「カップ、ひとつだから一緒に飲もう?」
「う、うん。」
恋愛初心者に、それは高度すぎるよ・・・。
「熱いからね?」
「う、うん。」
受け取って、唇に当てた。
用心しながら一口飲んだ。
「そ、そういえば、晋作くんの荷物って何だったの?」
静かな部屋に、そして一緒に並んでベッドに座っているシチュエーションに堪らず会話の糸口を探った。
「ああ、お守りらしい。商売繁盛のやつで、ボスに渡して欲しいんだって。」
ふふ、商売繁盛か。
「そういや、どこにやったっけ?」
立ち上がって、トオルさんはポケットを探った。
「あったあった、これこれ。」
封筒から取り出そうとしたら、ポロッと中身が落ちた。
「あ!」
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